おもしろブログ特集
世界に広がる神の祝福*ナルニア国物語*C,S,ルイス
CSルイスは、ナルニア国物語を書いた人物である。
彼は修道僧であった。しかし、病にむしばまれているひとりの女性を愛し、修道院を出て、結婚する。彼女の寿命はほとんどなかった。それを知っていて、CSルイスは彼女と結婚したのである。
その後、CSルイスは、オックスフォード大学で教えながら、ナルニア国物語を描いたのである。そんな彼の作品は、純粋な心と真実の愛に満ちている。
近年、ナルニア国物語が映画として上映されている。
1898年にアイスランドで生まれたCSルイスが書いた、ファンタジーの世界に秘められた意味とは、一体どういうものなのだろうか。
CSルイスは、こう言う。
「アスランと、私たちはいつでもこの世界で出会えます。」と。
1*ライオンと魔女
この物語は、四人の兄弟が、ロンドンから片田舎にある古い屋敷に疎開した時に起こった出来事である。
そこに着くと、笑いたくなるような風変わりな優しい学者先生が迎えてくれた。
ある日、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィの四人の兄弟は、学者先生の屋敷を探検していた。
その時、一番年下の女の子ルーシィが、衣装だんすの奥にあるナルニアというアスランの国を発見したことから、ナルニアの物語は始まる。
ルーシィは、衣装ダンスの奥に入り込むと、前方に一つの灯りを見つけた。その灯りは、衣装ダンスのすぐ後ろではなく、ずっと遠い所から光を投げかけていたのだった。
その時ルーシィに、なにやら冷たくふわふわしている物が上から落ちて来た。気がつくと、ルーシィは、雪の積もった真夜中の森の中にいたのである。
そこはナルニアの国だった。
ルーシィは怖いと思いつつも、なぜか心がわくわくして、その先に何があるのかを突き止めてみたくなる。ルーシィが進んで行くと、灯りは森の真ん中にある街灯だった。
ルーシィが、街灯の灯りを見上げながら立っていると、なにやら足音が聞こえて来る。
そして、木々の間から近づいて来たのは、まことに奇妙な人物だった。
腰から上は人間だが、腰から下はやぎの足、しっぽをはやし、その足先はやぎのひづめをしている。彼は、やぎと人とが入り交じったフォーンだった。
ナルニアは不思議な国だった。なんせ、人間の言葉を話す動物たちがいて、セントール(半馬半人)やフォーン、小人や木々の精トリアード、水の精ニンフまでいるのだがら。
フォーンはルーシィに気づくと「 なんてこった!」と、持っていた物を全部落っことすほどにびっくりする。
しかし、タムナスという名のフォーンは、初めて見たイブの娘、つまり人間の女の子に会ったことに驚きながらも、色々と質問をルーシィ投げかけながら、フォーンいわく"空き部屋という国の衣装たんす"という、遠い常夏の国の町から来たルーシィをお茶に誘うのだった。
いつもいつも冬であるナルニアに住んでいるフォーンに言わせると、ルーシィは永久に夏が続く遠い国の明るい町から来たと思えるらしい。
そして、お茶を飲みながらフォーンは懐かしそうに、ナルニアの森で昔過ごした楽しかった日々を色々と話すのだった。
水の精ニンフや木々の精トリアードたちと踊り明かした話や、時にはバッカスまで現れて川の流れが葡萄酒に変わり、楽しいお祭りの日が続いた事....。
ところが、今ではこのナルニアの国は悪い白い魔女によって、凍りついたような長い冬に閉じ込められ、雪が降り積もり冬が続くが、決してクリスマスが来ないのだと憂鬱そうに言う。
ところが、ルーシィと親しく話していたフォーンのタムナスは、急に泣き出し、いつまでも泣き止まない。心臓が破れんばかりに泣き続けるフォーンに、たまりかねたルーシィがイラッとして泣き止むように言うと、フォーンはルーシィがギョッとするような告白を始める。
「私のように悪いフォーンはいないから泣いているんです。実は、自分の正体は人さらいで、白い魔女に雇われ、いずれ来るアダムの息子とイブの娘がナルニアに現れた時、白い魔女に人間の子どもを引き渡すように命令されているのです。
たった今、イブの娘であるあなたをさらって魔女に引き渡そうとしているから泣いているんですよ。
そうしないと、ケア・パラベルの城の四つの王座が満たされるまで、自分が石に変えられて置物にされてしまうでしょう。」とフォーンは言うのだ。
でも、ルーシィにその事を白状し、自分のやるべきことに気ついたフォーンは、ルーシィを無事に元の世界に帰すことにするのだった。
フォーンに送られ森の街灯まで行き着いたルーシィは、再び衣装ダンスの中を通って、元の世界に戻ることができたのだった。
そこで、他の兄弟たちにナルニアの話をするが信じてもらえない。
しかしある日、みんなでかくれんぼをしている時だった。今度は、次男のエドマンドが衣装ダンスの奥に入り込んで、ナルニアに行くことになる。
その時、白い魔女が優しいふりをして弟エドマンドに近づいて、プリン(原作では、ターキシュ・ディライトというお菓子)を食べようにすすめる。しかし、そのプリンは食べると白い魔女の魔法にかかり、中毒のようにプリンを 食べることが止められなくなってしまい、最後には死んでしまうという代物だった。
エドマンドがプリンを食べた結果、彼は半分、魔女の味方のようになってしまう。
白い魔女が優しいふりをして、エドマンドに近づいたのは、エドマンドをあやつる為だった。そして、白い魔女は、エドマンドを自分の後継ぎとして王位に着かせると、エドマンドを欺くのだ。
ピーターとスーザンは、ルーシィとエドマンドから再びナルニアの話を聞き、当惑する。なぜなら、ルーシィは今まで一度も嘘をついたことがなかったからだった。そこで、二人は、学者先生の所に相談に行く。
ちょっと変わった学者先生だったが、 筋道を立てて二人に説明してくれる。
「むしろ、この世界と違うナルニアという違った世界があると考えるべきだと....。」そう学者先生は言うのだった。
そしてある日、古い由緒ある学者先生のお屋敷に、たくさんの見物客が来た時のことだった。四人の兄弟たちは、それがうっとうしいので、四人で衣装タンスの中に逃げ込むことにした。
その時、ナルニアに四人の兄弟たちを呼び寄せる何かの力が再び働いたのである。
四人は気が着くと、ナルニアの森の中にの雪をかぶった木々の中に立っていた。
ルーシィの言っていたナルニアの国が本当にあることがわかったピーターたちは、冬のナルニアの国を探検することにする。
そこで寒くないようにと、衣装タンスの中にかかっている外套を着て、冬の森の中をフォーンのタムナスの洞穴の家に向かうが、そこに着くとタムナスの家は壊され、タムナスはもうそこにはいなかった。
ルーシィを助ける為に白い魔女を裏切ったタムナスを、白い魔女が石にするために魔女の屋敷に連れて行ってしまったのだ。
四人が道に迷い困っている時に現れたのが、人間の言葉を話すビーバーだった。
そこで、まるで何かの摂理が働いているかのように、ビーバーたちからピーターたち兄弟は、ナルニアの話を聞くことになる。
「アスランが動き始めたという噂です。もう上陸した頃でしょう。」....ビーバーがこの言葉を言った途端に、どの子もみんな、今までにない不思議な感じを受けたのです。きっと皆さんも夢の中で、誰かが何かを言った、そのことがさっぱりわからないくせに、大変深い意味があるように感じたことが、あるに違いありません。....
アスランの名を聞いて、子どもたちはめいめい、心の中で、どきんと感じました。
エドマンドは、わけのわからない恐れの渦に巻き込まれました。ピーターはふいに強くなって、何でもやれる気がしました。スーザンは、何か香ばしにおいか、美しい楽の音が体を包む思いでした。そしてルーシィは、朝、目を覚ましてみたら、楽しい休みか、喜ばしい夏が始まった時のような気持ちを味わいました。....
「おお、アスランのことを、話してください!」同時に、いくつもの声があがりました。それは、春たつ始めのしるしのように、良い便りのように、またあの不思議な感じが、みんなの胸に起こったからでした。
「いったいアスランて、誰なんですか?」スーザンが尋ねました。
「アスランが誰かって?おやおや、知らないんですか?王さまですよ。この森のつかさ主ですよ。....とうとう戻って来たという知らせがあったんです。あの方は、今この時はもうナルニアにいます。あの方が白い女王のことをうまく裁いてくれるでしょう。....
あの方は、あらゆるものを本来の姿に戻すのです。古い歌にもこう言っている通りでよ。
アスラン来たれば、あやまちは正され、
アスラン吼ゆれば、悲しみ消ゆる。
牙が光ると、冬が死に絶え、
たてがみ震えば、春立ち戻る。...
「あの、人間ですか、その方?」とルーシィ。
「アスランが人間ですって?」ビーバーさんは、きっぱりと言いました。「もちろん、違います。あの方を森の王だと言いましたが、海の彼方の国の大帝の息子でもあります。....
アスランはライオンですよ。ライオン王、偉大なライオンなんです。」<CSルイス著*瀬田貞二訳>
ライオンと魔女の物語に出て来るライオンは、聖書でキング・オブ・メサイヤ!すなわち、ユダの獅子である救い主イエスキリストを指している。
(聖書のユダの獅子について詳しくは、ホームページ*最後のアダムイエスキリスト*ユダの獅子イエス*参照.もしくは、当ブログ.2013.12.25日*VII使徒の働き.ユダヤ人へのメッセージ*king of メサイヤ*2014.3.12日*最後の戦い*参照.)
そして、ナルニアには、もう一つの古くからの言い伝えがあったとビーバー 達は言う。
アダムの肉、アダムの骨が
ケア・パラベルの王座に着く時、
悪い時代は終わりを遂げる。
今や、アダムの息子とイブの娘たちである四人の子供たちがナルニアにやって来たのだ。
ビーバーたちは、この古い言い伝えは、ナルニアの国の都にあるケア・パラベルの城の四つの王座に、アダムの息子二人とイブの娘二人が王座に着いた時、白い魔女が支配する冬の時代が終わり、悪い魔女の命も終わるという意味だと話してくれる。
そして、ナルニアをいつも冬にしている白い魔女は、王位を乗っ取る為に人間だと思われたがってはいるが人間ではなく、天魔の血を受け継ぎ、一滴の人間の血も無いとビーバーたちは言う。
実は、白い魔女は、このナルニアの古くからの言い伝えの中にある真理を偽って、エドマンドを欺き嘘をついたのだった。エドマンドに自分の王位を継がせると。
本当には、エドマンドも含めた四人の兄弟たちをナルニアのケア・パラベルの城の王座に着かすことができるのはアスランだけなのに。
(アダムとイブについて詳しくは、当ブログ2014.3.12日*魔術師のおい*参照.もしくは2014.2.4日.おもしろブログ特集*最初のアダム*参照)
ビーバー夫妻と、エドマンドを除く四人の兄弟が、急いでアスランに会えるという石舞台に向かおうとしている時だった。
鈴の音が聞こえて来た。外に様子を見に行ったビーバーが大喜びでみんなに知らせる。
サンタクロースがナルニアにやって来たのである。
サンタクロースは、アスランがナルニアを救う為に動き始め、白い魔女の力が弱まっていると言う。
そして、ビーバー夫妻と、ピーター、スーザン、ルーシィたちそれぞれに、気の利いたクリスマスプレゼントを贈ってくれるのだった。
救い主イエスキリストの誕生を祝う為に始まったのが、クリスマスである。
それは、ユダの獅子(ライオン)であるイエスが全世界の王として生まれた日である。
だから、CSルイスは、アスランのナルニア到来と共にクリスマスが来るように描いているのである。
アスランがナルニアを訪れるだけで、白い魔女の支配が弱まって行く。
救い主イエスキリストは、悪魔のわざを打ち破る為に、クリスマスにこの世に来られたのである。百獣の王ライオンのアスランの姿は、そのイエスキリストを反映しているのである。
(クリスマスについては、当ブログ2014.3.12日*朝びらき丸東の海へ*参照.サンタクロースとクリスマスの秘められた意味については、当ブログ2013.12.18日*明けの明星*参照)
そしてついに、ナルニアにやって来たアスランが、みんなの前に現れる。
そのアスランの姿は、王者そのものである。
アスランは、ひと群れの動物たちの真ん中に立っていました。
動物たちは半月形にアスランを囲んでいて、木の精の女、泉の精の女(このひとたちを、私たちの世界ではドリアード、ナイアードと呼んでいます。)たちが、楽器を奏でていました。音楽の響きは、そこからしてきたのです。....
そして、アスランの隣りには、二頭のヒョウがひかえ、一頭はアスランの冠を、一頭はアスランの旗印を持っていました。
けれどもアスランその人を、どう言い表したら良いのでしょう。....
ナルニアに行ったことのない人にとっては、あくまでも善人でありながら同時に凄まじい恐ろしさを備えたひとというものは考えられません。....
このアスランを見ては、嫌でもそのことを悟らないわけにはいきますまい。<CSルイス著*瀬田貞二訳>
ライオンであるアスランは、威風堂々として何者も逆らうことが出来ないような、威厳のある王者の目をしていた。それでいて、柔和で優しい感じもただよっているのである。
「ようこそ、ピーター、アダムの息子よ。」とアスランが言いました。「して、ようこそ、スーザンにルーシィ、イブの娘たちよ。....」
アスランの声音は、深く朗々としていて、みんなのそわつきを払う働きがありました。アスランの前に立って、何も言わないで居ても、落ち着かない感じはありませんでした。「しかし、四人目の者はどこに?」とアスランが尋ねました。<CSルイス著*瀬田貞二訳>
みんなから、エドマンドが白い魔女の味方についてしまったことを聞いたアスランは、あらゆることをして、エドマンドを助けることを約束するのだった。
だが、ルーシィにはその時、なぜかアスランの顔がどこか悲しげに見えた。
しかし、アスランはすぐに力強い勇姿を見せ、ピーターの肩に手をやると(本当はライオンの足の裏だが)アダムの息子とイブの娘である四人の兄弟たちが王座に着くケアパラベルの城を見せるのだった。
ピーターは、....ライオンと一緒に原の東の端に行きました。美しい景色が目に止まりました。...海があり、海の彼方は、一面に雲がかかっていて、その雲が夕陽の照り返しを受けて、バラ色に染まっているところでした。
そして、ちょうどナルニアの国土が海に出会う辺り-あの大きな川の河口にあたる所に―小さな丘があって、その上に何かきらめく物がありました。それは、城でした。....
「ご覧、人の子よ。あれが、四つの王座をもつケアパラベルだ。王座の一つは、あなたが王として座るはずで、あなたが一番兄だから、一番位の高い一の王になろう。」<CSルイス著*瀬田貞二訳>
ビーバーたち始めナルニアに住む者は、アスランもやって来たし、四人のアダムの息子とイブの娘がやって来た今、すぐに悪い時代は消え去るに違いないと思っていたかも知れない。
しかし、アスランは、石舞台の上で一人の少年エドマンドを救う為に、自ら魔女に殺されたのだった。
世の始まりからの魔法、つまり掟があるためにアスラン自ら殺されなければならなかったのである。
その掟は、海の彼方の国の大帝が、世の始まりに、王としての最高権威をもってくだした魔法だった。その大帝の息子であるアスランは、もちろんその掟に逆らえない。
それは、魔女に欺かれ、罪を犯した裏切り者は、魔女の餌食となってしまってしまい、魔女がその裏切り者を死によって支配してしまうというものだった。
(世の始まりからの魔法は、聖書の<創世記2:16.17>の御言葉がモチーフ。詳しくは、当ブログ2014,3.12日*魔術師のおい*参照)
その掟のゆえに、アスランはエドマンドの命を助ける為に、エドマンドの身代わりとなって、白い魔女に殺されたのだった。
海と空とが溶け合うあたりで、赤は金色となり、ゆっくりと朝日の先が、あらわれました。その瞬間です。
(ルーシィとスーザンの)ふたりは、後ろの方に ただならぬ音を聞きました。巨人が岩をたたき割ったような、ものの砕ける、耳を破るほどのすごいとどろきでした。………
石舞台の石板が、はしからはしまで、真っ二つに割れていたのです。そしてどこにもアスランの姿はありません。‥‥…
ふたりは振り返りました。
朝日に輝いて、今までよりはるかに大きく(ふたりには思われました。)、たてがみをゆすりながら、そこにアスラン そのひとが立っていました。
「おお、アスラン!」ふたりの子供達は声を上げ、喜びとおそれにうたれて アスランを見上げました。
「アスラン 、それでは あなたは死んでいらっしゃらないのですか?」とルーシィ。
「今は、死んでいないよ。」とアスラン。
「では あなたは、あの.......?」とスーザンが、震える声でたずねかけましたが、まさか幽霊とは 言い出せませんでした。
アスランはその金色の頭を下げて、スーザンの額を舐めました。その息の暖かさ、髪からただよってくるような、深い香りが、スーザンを包みました。
「そう見えるか!」と アスラン。
「いいえ 、あなたは生きている 。生きていますね !ああ、アスラン!」<CS ルイス著*瀬田貞二訳>
アスランは生きていた。アスランは復活したのである。
白い魔女の力は打ち破られ、エドマンドは白い魔女の魔法の力から解放されたのだった。
二人の女の子たちが、ライオンにキスをし、「でも、これはいったいどういうことなの?」と尋ねると、アスランはこう答えている。
「それは、こうだ。魔女は確かに、古い魔法は知ってはいたが、あれの知らない、もう一つ元の、もっと古い魔法の掟があったのだ。魔女の知るのは、ただこの世の始まり止まりだった。だが、もう少し先を見通して、この世が始まる前の、静けさと闇とをつぶさにのぞんでおったなら、さらに違ったまじないが読み取れたはずだ。
あの女は、何の裏切りも犯さない者が進んでいけにえになって、裏切り者の代わりに殺された時、掟の石板は碎け、死は振り出しに戻ってしまうという、古い定めを知らなかった。....」<CSルイス著*瀬田貞二訳>
裏切り者は殺されなければならないという世の始まりからの魔法よりも、もっと古い魔法の掟があったのだ。
アスランによってナルニアが創造される前にまで逆上る、世の始まりより前からのもっと古い魔法。(アスランによるナルニアの創造は、魔術師のおいの物語)
それは、何の裏切りも犯さない者が進んでいけにえとなり、裏切り者の身代わりとなって殺された時、掟の石板はくだけ、死は振り出しに戻ってしまうという定めだった。
アスランの父親である海の彼方の大帝は、アスランがナルニア国を創造する前から、いずれナルニアに悪がはびこる可能性を見越していたのである。
白い魔女のように天魔の血を受け継いでいる者がやって来て、ナルニアの支配者としてのさばり、必ずや魔女に騙され死に定められてしまう犠牲者が出てしまうことがわかっていたのである。それで、魔女の理解を越えた掟、世の始まりからのもっと古い魔法が計画されていたのだった。
その掟は、ナルニアの創造主であるアスランが、自らが命を捨てるほどにナルニアの国とそこに住む者たちを愛するならば、救うことができるというものであった。
アスランの父親である海の彼方の大帝は、白い魔女のような暴君ではなく、愛によってナルニアを治める者こそが、真のナルニアの王としてふさわしいと考えていたわけである。
だから、アスランの父親である海の彼方の大帝は、息子のアスラン自身に苦難の道を通らせたのである。
アスランは、アダムの息子とイブの娘が座るケアパラベルの四つの王座の上にたつ王、すなわちナルニアの王の王として、ふさわしい人物だった。
自らの命を捨ててまで、裏切り者エドマンドと冬に支配されているナルニアの国を救おうとするアスランの熱い愛の心が、白い魔女に騙され頑なになっていたエドマンドの心を溶かし、凍りついような冬のナルニア国を復活させ本来の姿に戻したのだから。
愛そのもののようなアスランは、白い魔女に騙され、白い魔女の言った事を信じ、罪を犯してみんなを裏切ってしまったエドマンドを、決して見捨てなかったのである。
石舞台の出来事は、アスランこそがナルニアの国を治める最高権威を持つ王として、真にふさわしい人物である事を証明するものであった。
(世の始まりより前からのもっと古い魔法は、聖書の<エペソ1:4ー7>の御言葉がモチーフ.詳しくは、当ブログ2014.3.12日.*朝びらき丸東の海へ*参照)
ライオンと魔女の物語でのアスランの石舞台の出来事は、イエス キリストの十字架を意味している。
救い主イエスは、私たち人間の身代わりとなって、私たちの罪を負い十字架の上で死なれたのだった。そのことによって、悪魔の力は打ち破られた。
暗闇に変えて光の世界が広がったのである。
そして、イエス キリストは、死なれたままではなく、三日目に墓の中から復活された。
そのイエスによって、私たち人間に永遠の命が与えられるようになったのである。
復活されたイエスキリストは、今も生きておられる。
ナルニアに古くから伝わって来た言い伝えがあったように、旧訳聖書には、救い主イエスキリストの十字架の死と復活が預言されていた。
また、救い主イエスキリストによって、世界の国々や私たちの人生に春がもたらされると、聖書の雅歌に約束されているのである。
ライオンと魔女の物語では、エドモンドひとりのためにアスラン が死ぬ。
そこが、私たち全ての人間を救うために死なれたイエス キリストとは違うと思われるかもしれない。
しかし、CSルイスは、ひとりの人間の命が地球よりも重たいと言われるほどに、高価で尊いのだと言いたかったのかもしれない。
「アスランは実存する。」
アスランは、メシア、すなわち救い主としてのイエスキリストを現わしている。
聖書では、イエス キリストは ユダの獅子、すなわち百獣の王であるライオンとして登場する。そして、救い主イエスキリストは、十字架の上で悪魔の力を打ち破られ、勝利されたのだった。
イエスキリストは、王の王である。したがって、この世界の最高の権威者であり、この世界の全てを治めておられる方なのである。
ナルニア国物語では、ライオンと魔女の物語以外でも、ライオン・アスランと子ども達が魔女の悪しき力と戦うというテーマが貫かれている。しかし、必ず、アスランの使命を受けたアダムの息子とイブの娘が、アスランと共に勝利するのである。
その基となっているのが、イエスキリストの十字架の勝利なのである。
(詳しくは、ホームページ*最後のアダムイエスキリスト*十字架の血による平和*参照)
CSルイスは、キリスト者(キリストを信じるもの)として、ナルニア国物語全7巻を聖書を土台として書いたのだった。
ナルニア国物語には次のようなものがある。
(当ブログ2014.3月12日に別のversion でも掲載)
2*カスピアン王子の角笛
この物語は、カスピアン王子が、アスランとピーターたち四人兄弟の力をかりて、ナルニアを甦らせる話である。
カスピアン王子は、スーザンがサンタクロースからもらった角笛を使って、助けを呼び求める。
聖書では、角笛は、新年を告げ知らせたり、大切な時に民の召集の為に使われる。
また、ラッパ吹きの預言者というのがエゼキエル書に出て来るが、見張り人としての役割があり、イスラエルの国や民に危機を知らせる務めがあった。
ピーター達が駅のホームにいた時、カスピアン王子の角笛によって急にナルニアに引き寄せられる。
彼らが、ナルニアの国に帰ってみると、そこは自分たちが王や王女の頃とまったく違っていた。以前と違うナルニアに戸惑いながらも、彼らは先に進もうとする。
実は、ナルニアの時間とこの世界の時間の進み方が違うので、ピーター達にとっては少しの時間でも、ナルニアでは数百年立っていたのだった。
この頃のナルニアは、テルマール人と呼ばれる人間達に治められていた。そして、ものを言う動物達は、テルマール人を恐れて姿を消してしまっていた。....
アスランとカスピアン王子の出会い
カスピアン王子は、コルネリアス博士からアスランの話を聞いた時から、ナルニアがアスランの国であることを信じたのだった。
そして、昔ケア・パラベルの城で王として治めていたアダムの息子とイブの娘たちの話も、白い魔女の話も真実であることがわかったのである。
コルネリアス博士から、誰が吹きならしても必ず不思議な助けが来るスーザンの角笛をもらったカスピアン王子は、ナルニアの危機により、角笛を吹きならすことにする。
カスピアン王子は、ピーター王、スーザン女王、エドマンド王、ルーシィ女王が助けに来ることを、また、アスラン自らさえ助けに来ることを信じ待ち望んでいた。
そのことは、たとえ、ナルニアの小人族がいかにアスランたちを否定した時でも変わることがなかった。
そして、カスピアン王子の信頼したとおりに、ピーターたち王と女王の四人の兄弟もアスランもナルニアにやって来たのである。
「こちらが、カスピアンです、アスラン」とピーターが言いました。カスピアンは、膝まずいて、ライオンの足先にキスしました。
「ようこそ、王子よ。」とアスランが言いました。「あなたは、我こそナルニアの王位に着くのにふさわしいと、自分で思うかな?」
「いえ、いえ、そうは思いません、アスラン。」とカスピアン。「私は、まだ子どもでございますから。」
「よろしい。」とアスラン。「自分からふさわしいと思い込んでいたら、それこそふさわしくないしるしなのだよ。それでは、我らの下、一の王の下にあって、ナルニアの王、ケア・パラベルの領主、離れ島諸島の皇帝であるがよい。あなたの種族の続くあいだ、あなたとあなたの子孫が、その位にあることにしよう。そしてあなたの、王冠をいただく式は...」........それから、アスランの指図にしたがって、ピーターがカスピアンにライオン位騎士の爵位を授け....<CS ルイス著*瀬田貞二訳>
アスランは、カスピアン王子を祝福し、彼の王位を代々彼の子孫に与え、ライオン位騎士の爵位を授けたのだった。
カスピアン王子は、聖書では、ダビデ王がモチーフ。
アスランがカスピアン王子にライオン王の爵位を授けたように、イスラエルの国のユダ族出身のダビデ王は、神より王に任命されたのだった。
そして、ユダ族のダビデは、イスラエルの国の王の権威を与えられただけでなく、代々ダビデ王の子孫が王の称号を継承したのである。
ダビデは生涯、神を信じ、神を愛し、神に従い続けた人物だった。
それゆえ、神はダビデに大いなる祝福を与えられた。
神はダビデに、大いなる名を与えられたのである。<第2サムエル7:8.9.創世記12:2>
3*朝びらき丸東の海へ
文句ばかり言い、ぶすぶすユースチスと呼ばれていた少年が、新しく生まれ変わる物語。
いとこのユースチスの家に遊びに来ていた エドマンドとルーシィの三人は、部屋にある絵の中に吸い込まれ、そこからナルニア国での冒険が始まる。
大人になったカスピアン王と彼らは、朝びらき丸という船に乗って、東の海へと航海に出る。......
アスランとユースチスとの出会い
ユースチスは、皆と一緒にいるのがいやになり、ひとり離れて行動する。
そのうちに竜のいる洞穴に入り込んでしまう。そして、ユースチスは眠っているあいだに竜になってしまった自分に気づくのである。痛みと孤独の中で苦しむユースチス。
そこへ、ライオンが現れ、ユースチスの体の竜の皮を脱がせた後で、ライオンの手が洋服を着せたのだった。アスランに出会ったことが、彼を変えたのである。
イエスキリストを信じる者も新しくされ、新しい命によって生きるようになる。古いものは消え去り、すべてが新しくなるのである。
僕は目を上げて、 僕の予想もしていなかったものを見たんだ。僕の方にゆっくりやってくる 大きなライオンだった。
そして不思議なことに、昨日は月が出ていなかったにもかかわらず、 ライオンのいるところには 、月光がみなぎっていた。....で、それはいよいよ僕に迫って来て、ぴたりと僕の目を見つめた。そして僕は、それが告げたことをしなけりゃいけないことがわかったから、起き上がって、その後について行った。ずるとそれは、山の中へ長い道のりを案内していく。そして僕たちの行くところにはいつも、そのライオンの上に、また周りに 月の光がさしているんだ。やがて 僕たちは、これまで見たことのない 山の頂に出た。その頂には、庭があったよ。木々や果物や なんやかやがあってね。その真ん中に井戸があった。......
その時、ライオンがこう言った―しゃべったかどうか分からないが-おまえは、わたしにその着物を脱がせなければいけない 、とね。.......
その後すっかり良い具合になって、なかで泳いだり、 バシャバシャ 水をはなかせたりし始めると、腕のあれほどの痛みがきれいに取れていることが、わかった。 その時に、僕は、どうしてだかそのわけを知ったよ 。僕が再び男の子にもどったんだ。......
「きみは、アスランに会ったのだ、と思うよ。」
「アスラン!」ユースチスが言いました。<CSルイス著*瀬田治二訳>
その後、朝びらき丸が、航海の途中、長い暗闇の中に入り込んだ時に光に導いたのは、一羽の鳥に姿を変えたアスランだった。
アスランは鳥となって現れた時から、船は太陽の光の中につき進み、青く輝く暖かい世界に出ることができたのだった。
イエスキリストも一羽の鳩として聖書の雅歌に登場する。
イエスキリストは、世の光として、暗闇にいる人々を光に導の中に導かれる。
朝びらき丸が、航海の最後を迎えた時、太陽の光は何倍にもなっていった。
石舞台でのアスランのロープを切ったネズミのリーピチープは、東の海の果てで、真水を飲んで永遠に生きることになった。
イエスキリストは、命の水を豊かに与える方であり、彼を信じる者は、心から永遠に至る命の水が沸き上がるようになる。
また、聖書のエゼキエル書の最後には、死海という塩分が非常に強い海の水が、真水に変えられ、すべてのものが生きるとある。
このことは、イエスの復活の命の絶大な力を現わしているのである。
朝びらき丸での航海を終え、エドマンドとルーシィ、ユースチスの三人を、子羊に姿をかえたアスランが出迎える。これは、世の罪を取り除く小羊としての救い主イエスを表している。
そして、アスランはエドマンドとルーシィに、「もうあなた方兄弟はナルニアに来ることはないだろう。」と伝えた後、こう言うのである。
「それでも、あなたは、わたしに会うよ。...ただし、あちらの世界では、わたしは、ほかの名前をもっている。あなた方は、その名でわたしを知ることを習わなければならない。
そこにこそ、あなた方がナルニアに連れて来られた本当のわけがあるのだ。」<CSルイス著*瀬田貞二訳>
アスランが語ったこの言葉こそが、ナルニア国物語を通して、CSルイスが、一番私たちに伝えたかった言葉かもしれない。
4*銀のいす
ユニークなキャラクターの泥足にがえもんと、たくましくなったユースチスと女の子ジルが、行方不明になったナルニア国の王子を探し出す冒険物語。
アスランとジルとの出会い
ジルが高い所が平気だと見せびらかす為に、崖のはしに行き、落ちるのを止めようとしたユースチスが崖から落ちてしまう。ジルは、崖か落ちて行った彼のことを思い出して泣いていた。
そこに、アスランが現れる。アスランは、ジルからユースチスが崖から落ちた時のことを聞き、彼が無事であることを告げる。
「おいで。」ライオンが言いました。そして、ジルは、従がわないわけにはいきませんでした。それもライオンの前足の間に入ったようになり、その顔と真正面に向き合いました。が、長い間 、ジルはその顔を見つめてはいられずに、目をふせてしまいました。
.......「...あんたがたは、行方不明の王を探し、王子を見つけて、父王のもとについて帰るのだ。探しているうちに死ぬか、もとの自分たちの世界に戻ってしまうこともあろう。」
「どのようにして、探すのですか 、教えてください。」とジル。
「教えよう 。わが子よ。」とライオン。「探しに行く際に 、あんたを導くいくつかの しるべがある。
その第一は、男の子ユースチスが、ナルニアに着くやいなや、昔馴染みの親友に出会うだろう。ユースチスは、ただちにその友達に挨拶をしなければならない。すぐ挨拶をすれば、あんたがたは、良い助力を得ることになろう。
第二に、あんたがたは、ナルニアから北方へ向かって旅をして、昔の巨人族の跡に行かなければならない。
第三に、その崩れた都の跡で、ある石の上の文字を見つけるのだ。そして、その文字の告げることを果たさなければならない。
第四に、その旅の途中で、わが名アスランの名にかけて、あんたがたに何かしてくれと頼む者に初めて出会うだろうが、それによって、あんたがたは、行方不明の王子を(もし見つけ出した場合には)その人と認めることができるだろう。」...
「...だが、 まず何よりも覚えておけ。かたくかたく覚えておけ、あのしるべを。そして、朝寝をさました時、夜横になった時、夜中にふと目覚めた時、いつもそれを思い起こせ。......」...「そのしるべを心で知って、見せかけにはだまされないことが、とても大切なのだよ。しるべを思い出せ。そして、そのしるべを信じなさい。...」<CS ルイス著*瀬田貞二訳>
ライオンのアスランがジルの前に現れて、アスランはジルにナルニアの行方不明になっている王子を探し出す為の4つのしるしを告げた。
そして、アスランはジルに、そのしるしを忘れないように、朝も夜も、いつもそれを思い起こすよう言ったのだった。
これは、聖書の詩編1編の御言葉がモチーフとなっている。
”主の教えを喜びとし、昼も夜もその教えを口づさむ。
その人は水路のそばに植わった木のようだ。
時が来ると実がなり、その葉は枯れない。
その人は、何をしても栄える。〃
聖書の御言葉を告白することは、その人の人生に成功をもたらすのである。
何よりも、聖書に書かれている言葉は、真実な神と私たち人間との約束なので、その言葉を成就する責任を神ご自身が負ってくださるのである。
また、聖書には、御言葉を思い巡らした人々が登場する。
イエスの母マリヤもそのひとり。
御言葉を思い巡らすことによって、神の御心を深く知ることができるし、たとえ妨げるものがあったとしても、そう行動することが、たやすくなる。
5*馬と少年
ものを言う馬ブレーと、養父によって奴隷に売られようとしているシャスタが、自由の国ナルニアを目指して繰り広げる冒険物語。
シャスタとブレーは、カロールメンの国を出て、ナルニアに向かう旅の途中で、ひとりのタルキーナ・アラビスと、ものを言う雌馬フインに出会う。
ふとしたことからアーケン国とナルニアの国の危機を知った二頭と二人は、その計画を阻止しようと、至急ナルニアに砂漠の中を旅をする。
やっと、アーケンへの国境の仙人の家に着き、アラビスとブレーやフインは休むことできたのだが、シャスタだけは走り続けることになる。
狩りに来ていたアーケン国のリューン王に、シャスタはちょうど出くわし、共に行くことになる。
アスランとシャスタとの出会い
シャスタが、危機を知らせる為の一行とはぐれ、険しい山道をひとり、前進しなければならなかった時のことである。
誰かが、ずっと自分のそばを離れずに歩いている。その誰かは、シャスタが話しかけるのをずっと待っていた。
シャスタは、暖かい誰かの息づかいを感じ、その息で安心し、今まで不幸せだと思っていたことをみんな打ち明けたのだった。
しかし、シャスタはそこで、ライオンであるアスランが、いつも共にいて、自分を慰め、守り、道を導いていてくれたことを知ったのだった。
シャスタは、自分の側を何とも誰ともわからないものが歩いているのに気がついたのです。........「あんた誰?」とシャスタは、ささやき声にもならないほど小さな声で言いました。
「あんたが話しかけるのを、ずっと前から待っていた者だ。」とその何かが言いました。
..........「....ああ、僕は、この世で一番不幸せな人間なんだ。」するとまた、シャスタは、 その何かの暖かい息づかいを手と顔に感じました。.......
「....あなたの不幸せだと言うことを、 みんなわたしに話してごらん。」
シャスタは、その息で少し安心しました。そして、どうして自分が本当の父や母を知らないのか、どんなに厳しく漁師に育てられたかを話しました。
それから逃げ出した時の話、ライオンに追いかけられて、とうとう泳いでを助かった話をしました。
また、タシバーンで起きた 危ない出来事の数々、お墓で過ごした夜のこと、それに砂漠の中から出てきた 野獣のことなども話しました。
さらに また、砂漠の旅の暑さや喉の渇き、目的地のすぐそばで またライオンに追いかけられ、アラビスが 傷を負ったこと、その上 、自分がもう長い間 何も食べてないことも話しました。
「わたしの考えでは 、あんたは不幸せだとは言えないな。」とそのすごい声が言いました。.........
「わたしがあんたをアラビスに会わせるようにしたライオンだったのだよ。あんたが死人の家 、墓地のあたりにいたとき 慰めたネコもこのわたしだ。寝ている時、 ジャッカルを追い払ったライオンもわたしだ。あんたがリューン王のところへ遅れずにつけるように、追われる恐ろしさから 最後の一キロを駆け通す新たな力を馬たちに授けたライオンも、このわたしだ。
それから、これはあんたの知らないことだが、昔、死にそうな赤ん坊だった あんたを乗せた舟を押して、夜中に眠れないで 浜辺に出ていた男に、あんたを渡すようにしたライオンも、このわたしだったのだよ。」.......
シャスタの目は、まぶしくなりました。行手のどこかで 鳥の鳴き声が聞こえてきました。
とうとう 夜が明けたことが分かりました。自分の乗っている馬のたてがみも、耳も頭も
よく見えるようになりました。黄金色の光が左手からさしてきました。朝日だろうとシャスタは思いました。
振り返ると、自分のそばを歩いていたのは 馬より背の高い、一頭のライオンでした。....
さして来た光は、そのライオンから出ているのです 。これほど恐ろしいもの、しかも美しいものは、他にないでしょう。<CSルイス著*瀬田貞二訳>
イエスキリストは、いつも共におられる。そのことがこの物語のモチーフ
私たち人間も愛する人といつも一緒にいたいと思うものである。
愛する相手のことが気になってしまう。
神は愛であり、私たちの髪の毛の数さえ毎日数えておられるほどに私たちを愛され、私たちの人生の全てを知っておられる。と聖書に書かれている。
その全てに、神の御心や御手の働きがあり、私たちの人生を治めてくださっているのである。
イエスキリストもまた、アスランと同じように、私たちと共におられ、私たちを守り、私たちの人生の道を導かれるのである。
6*魔術師のおい
シャーロク・ホームズがまだ生きていた頃、ロンドンの町に住んでいた女の子ポリーと、魔術師のアンドリューを叔父に持つ少年ディゴリーの物語。
ディゴリーのお母さんは病気だった。お母さんが死んでしまうのではと心配するディゴリーとポリーは友達になる。
そして、ある寒い夏、ふたりは、棟づづきの家の屋根を探検することにする。そこで、魔術師アンドリューによって、魔法の指輪による騒動に巻き込まれる。
別世界に連れて行かれたディゴリーとポリーは、ライオンのアスランがナルニアを創造しているところに遭遇する。
アスランの荘厳な声によって、闇の中に星座や惑星がきらめき出し、生まれたばかりの太陽が昇りだす。新しい太陽は、喜びのあまり笑っているように見えたほどに輝いていた。
そして、アスランが、再び、新しい歌を歌うと、何もなかった土地に草木が芽生え、木々が成長し、青々とした世界が広がった。
アスランがまだ歌っていると、今度は色々な種類の動物たちが現れ出したのである。
魔術師のおいの物語は、聖書の創世記がモチーフとなっている。
アスランとディゴリーとの出会い
アスランより、お母さんの病気を治す命の木の実をもらいたいと願うディゴリー。
ナルニアの守る為の木の実であるリンゴを取りに行くように、アスランから命じられる。
涙をこらえつつ、無事リンゴをナルニアに持ちかえったディゴリーに、アスランは喜びをもたらすリンゴを彼に与える。
アスランは、ディゴリーが考えていた以上に大きく、美しく、眩しいほど金色で おまけに恐ろしい感じでした。......
「お願いですーライオンさんーアスラン」とディゴリー。「あのうーお願いしますーおかあさんの病気を直すような 魔法の果物がこの国にあったら、くださいませんか。」......
その時見たものほど生まれてこのかたディゴリーを 驚かせたものはありませんでした。
そして(不思議とも不思議)きらきらひかる 大粒の涙がライオンの二つの目に浮かんでいました。
その涙は、ディゴリー自身の涙に比べて、あまりにも大きく、よく光っていましたので、一瞬、本当はライオンの方が、自分よりずっとお母さんのことで 心を痛めてくれているに違いない と思い込んだくらいでした。
「わが子よ、わが子よ、」とアスランは言いました。「わたしにはわかっている。悲しみというものは偉大なものだ。この国では まだ、それを知る者はあんたとわたししかいない。わたしたちは互いに力になろう。しかしわたしは、これから先何千年にもわたる ナルニアの未来を考えなければならぬ。あんたが この世界に連れて来た魔女は、再びナルニアに 戻ってくるだろう。しかし今すぐというわけではない。わたしの願いは、ナルニアに魔女が近づく事を恐れるある一本の木を植えること。そうすればその木が、これから先長い年月の間 、ナルニアを魔女から守ることになろう。そして この国はいつ雲が太陽 を覆う時がこようとも 、それまでに長い、輝かしいあしたを楽しむことができるだろう。あんたはわたしの為に、その木に生い育つ種をとってきてくれなければならぬ。」
「はい。」とディゴリーは答えました。
ディゴリーには、どうすればできるのか分かりませんでしたが、 今では、きっとできるのだとかたく信じる気持ちになっていました。
ライオンは深く息をして、頭を低くかがめ、ディゴリーに ライオンのキスをしてくれました。するとたちまち、ディゴリーは、体の中に新しい力と勇気が湧き出すのを感じました。…<CS ルイス著*瀬田貞二訳>
ディゴリーは、天馬に乗って、ライオンに言われたとおりに、ある丘の頂きにある果樹園の真ん中にある一本の木からりんご をひとつもぎとって、ライオンのところに持って帰って来ることになりました。
丘の頂きに着くと、東に向いた金の門があった。ディゴリーが、門に近づくと、その金の扉に銀の字で書かれた文字を見ることができた。
黄金の門より入れ、門からでなければ入るべからず。
わたしの木の実は人の為にとるのでなければ、遠慮せよ。
木の実を盗む者と、門の外からこの地に入る者は、
心の欲を満たしても、終わりのない絶望をも見つけ出す。
ディゴリーが門の扉に手をかけると、その扉はすぐに開いた。アスランが命じた者のディゴリー為に門はその扉を開けたのだった。
その果樹園の真ん中には、キラキラと輝いている大きな銀色のリンゴがたくさん実った
木があった。
ディゴリーは、リンゴを一つ取ると、リンゴをしまう前にそのリンゴの香りを嗅いでしまった。そうしたディゴリーは、急に激しく喉のかわきに襲われたので、彼はあわててリンゴをポケットにしまった。
その時、門を乗り越えて入ったに違いないあの魔女が立っていた。
魔女は、自分の欲の為にリンゴを食べたらしく、その顔はごう慢で、まるで死んでいるように恐ろしいほど白かった。
一刻でも早くと、魔女から離れ逃げ出したディゴリーは、門の外に出た。
しかし、追いかけて来た魔女は、ディゴリーをだまして、誘惑しようと嘘をならびたてたのである。
アスランに黙って母親のところにリンゴを勝手に持って帰るように誘惑されたディゴリーは、まるで傷を受けたように苦しんだが、母親がいつもディゴリーに約束を守るように言っていることを思い出し、アスランとの約束を守ることを決心する。
そして、ディゴリーは、無事にアスランのところにリンゴを持って帰ったのだった。
アスランは、ディゴリーがそのリンゴを持ち帰る為に、いかに喉の渇きを我慢し、母親の為に苦しみ泣いたかを、すべて知っていた。
そして、アスランからほめられたディゴリーは、アスランの創造のしたナルニアの地にそのリンゴを植えたのだった。
その後、アスランから、そのリンゴの種から育ったリンゴを、母親の為にもらうことができたディゴリーは、喜びのあまり夢を見ているようだった。
この世界に戻り、ディゴリーは母親にリンゴの皮をむいて食べてもらうと、アスランが言ったとおりに、奇跡がおこり、ディゴリーのお母さんの病気はすっかり良くなったのである。
アスランは、決して、ディゴリーを失望させなかった。いや、むしろ、ディゴリーが心配しているよりも、彼の母親のことを心配していた。
同じように、イエスキリストのところに行く者は、決して失望に終わることがない。
救い主イエスは、病人を癒され、慰められる方である。また、心の悩み、苦しみも顧みられる。
そして、豊かな命を与え、喜びに満たされる方なのである。
7*最後の戦い
よこしまな猿と自信のないロバのトマドイが、ライオンの毛皮を拾ったことから、この物語は始まる。
猿のヨコシマは、ロバのトマドイにライオンの毛皮を着せ、アスランの真似をさせて、ナルニアを欲によって思うように支配しようとする。
アスランの偽物が現れたことにより、ナルニアの国は、非常な災難に遭遇する。
やがて、猿のヨコシマや悪を企むカロールメンの人間によって、悪魔に支配されているような偽物の神タシランを呼び寄せてしまう。
しかし、アスランの名にかけて命じられた言葉によって、偽物の神である破壊者タシランは消え失せた。アスランの名にかけて言う言葉には、力があったのだ。
イエスの名前には力がある。彼の名によって悪霊の支配や束縛から、人々は解放されるのである。イエスの御名には、最高の王としての力があり、権威があるのである。
アスランの、「時が来た。」と叫ぶ、空の星を震わすほどの大声に応じて、ナルニアの国は終わり、新しい世界の扉が開かれた。
最後の戦いには、アスランと人々との二度と離れない永遠の出会いが描かれている。
聖書の黙示録がモチーフ
時が来ると、世の終わりのラッパが響き渡り、イエスキリストを信じる者たちも、新しい天と地、すなわち天国に住むことになるのである。
そして、そこには、もはや死もなく、悲しみもなく、苦しみもない。
また、その中央には、水晶のように光るいのちの水の川が流れ、その川の両岸には、いのちの木があって、十二種の実がなっている。
最後に。
ナルニア国物語に、アスランと人との色々な出会い方があったように、現実のこの世界のライオン、すなわちイエスキリストとも、色々な出会い方がある。
イエスキリストと出会える時は、私たち人間が、イエスキリストと出会いたいと本気で求めた時かもしれない。