2014年3月12日水曜日

世界に広がる神の祝福*ナルニア国物語*CSルイス2

おもしろブログ特集

世界に広がる神の祝福*カスピアン王子の角笛*CSルイス




カスピアン王子の角笛
この物語は、カスピアン王子が、アスランとピーターたち四人兄弟の力をかりて、ナルニアを甦らせる話である。
カスピアン王子が、スーザンがサンタクロースからもらった角笛を使って、ナルニアを危機から救う為の助けを呼び求めるのである。
そして、ピーターたち四人兄弟は、カスピアン王子の角笛によって急にナルニアに引き寄せられる。彼らが、ナルニアの国に帰ってみると、そこは自分たちがケア・パラベルの城で王や王女の座に着いていた頃とまったく違っていた。以前と違うナルニアに戸惑いながらも、彼らは先に進もうとする。
実は、ナルニアの時間とこの世界の時間の進み方が違うので、ピーター達にとっては少しの時間でも、ナルニアでは数百年経っていたのだった....。

ライオンと魔女の物語から1年経ったある日のこと、ピーター、スーザン、エドマンド、ルーシィの四人の子供たちは、学校の寄宿舎に戻る為に駅のプラットホームにいた。
その時急に、四人は何かの力に引っ張られるように感じた。それは、魔法の力だった。
次の瞬間、四人の子供たちは、今までの世界とは違う別の世界に立っていた。
そこは、木が茂り枝が張りだしているので、四人はほとんど動けない。そこで彼らが、バラやイラクサのとげに引っ掛かりながらも、なんとかそこから抜け出すと、目の前には、波が静かな海が鏡のように広がっていた。
空には雲一つなく、目の覚めるような青空だった。そして、太陽があたり一面に輝いていた。
潮風の吹く中で、しばらくのあいだ四人は夢中になってカニや小エビを追いかけていたが、このままではいずれ水や食糧が必要になることに気づき、飲み水を探して、海に川が流れ込んでいる所を見つけに行く。
四人が浜に添って歩いて行くと、銀色に輝く川が浜を横切っていた。川を逆上り、森の中にある源流近くまで行き、四人は真水を飲んだ。今度は食糧を見つけなければならない。
そこで、川すじを逆上り、森の中を探検していると、何やら芳香なリンゴのにおいが漂って来た。
みんながいる右側の川岸の真上に、黄色がかった金色のリンゴの実がたわわに実っていたのだ。そのリンゴは、いかにも汁気たっぷりで美味しそうだった。
次々にリンゴを食べながら「ここは果樹園だったに違いない。」と、話し合う四人。周りを見れば、あっちにもこっちにもリンゴの木があるのだった。
「あれは、何?」とルーシィが指を指した方を良く見ると、リンゴの木の向こうに古い石の壁があり、どうやら崩れ果てた城壁のようだった。

たわわに垂れ下がったリンゴの実や枝を押し退けながら、古い城壁の中に踏み込みだ四人は、不思議な感覚に捕らわれる。
なかでもピーターは、その古い城の中を見ると不思議と心がエキサイトして、「あっちが政務台のある王座だな。僕らが昔、王や王女だった頃に座っていたケア・パラベルの王座のようにね。」などと話し出すのだった。すると、スーザンもルーシィも、ナルニアの川の河口にあったケア・パラベルの城が懐かしく、何もかもいっぺんに思い出されるのだった。

日も暮れだし、四人は夜に備えて、焚き火の薪や夕食の為のリンゴを集めに精を出すことにする。
やっと火を起こすと、もはや飽きるくらいに昼食に食べたリンゴを、四人は再び食べながら「いつもまずいと思う給食も、今ならうまいと思うだろうな。」と言いつつ、またもやリンゴをたっぷりと堪能したのだった。
リンゴを食べ終わると、井戸に水を飲みに行ったスーザンが、井戸のそばで純金のチェスの駒を見つけて来た。
それを見たピーターは、ここはナルニアの国、ケア・パラベルの城跡だと確信する。しかし、他のみんなは、「この荒れ果てた城がケア・パラベルだ」と言うピーターの意見に、まだ半信半疑である。
そこで四人は、ケア・パラベルの城かどうかを確認する為に、昔自分たちが使っていた宝倉に入る扉が、王座の隅にあるかどうかを見つけることにする。
石壁はツタでぎっしりと覆われていた。そこで、エドマンドが薪用の枝を手に取り、石壁を叩くと始めは石の音していたが、まもなく木を叩いているうつろな音がした。
ピーターとエドマンドがツタを除くと、そこには宝倉の扉があったのだった。
夜空には星が輝き出し暗くなっていたが、心に謎を吹き込まれたようで、眠れない四人は、暗い中、懐中電灯の光で照らしながらその扉を開け、階段を下に降りて行く。
懐中電灯の光に照らされた光景を見て、四人は思わず声を上げた。やはり、ここはケア・パラベルの城跡だったのだ。
宝倉の中には、四人の子どもたちが王と王女だった頃に使っていた宝や貴重な品々が埃をかぶって眠っていたのだった。

彼らは、ケア・パラベルの宝倉の中から、昔ナルニアでサンタクロースにもらった贈り物を持って行くことして、ルーシィは、どんな傷も病気も直せるダイアモンドでできた魔法の薬の瓶を取り出した。
スーザンは、弓矢と角笛を取り出そうとしたが、弓矢は見つかったが、角笛は何処にもなかった。危険な時に吹き鳴らすと必ず助けが来る魔法の角笛が無いのは損失だったが、スーザンは弓矢があれば大丈夫だと言いながら、それらを身に着けた。
ピーターは、赤いライオンが描かれた楯と王剣を取り出した。彼が剣を抜くと、懐中電灯の光で、そのリンドンの剣はきらめきいた。その姿は、ピーターはやはり、昔どおりの一の王だと思わせた。
(クリスマスについては、当ブログ2014.3.12日*朝びらき丸東の海へ*参照.クリスマスとサンタクロースの秘められた意味については、当ブログ2013.12.18日.*明けの明星*参照)

四人は宝倉から出ると、焚き火の近くで眠りについたが、なにしろ固い地面に寝ているので、恐ろしく早く目が覚めた。四人は仕方なく、その朝もリンゴだけの朝食を堪能し、井戸の水を飲み、顔を洗って、さっさと出かけることにしたのだった。
四人が元の海岸に出て海峡を眺めていると、一艘のボートが現れ、こちらの方向へと進んで来る。そのボートには、テルマール人の二人の兵隊と、手足を縛られたナルニアの小人が乗っている様子。
二人の兵隊が子人を溺れ死にさせようとしたまさにその時、スーザンが放った矢が兵隊に見事に的中する。スーザンの矢によって水中に落ちた兵隊が、もがいて遠くの岸に向かって泳いで逃げ出すと、もう一人の兵隊も慌て自分から水に飛び込んで、海を渡り、森の中に逃げて行った。森にお化けがいると信じているテルマール人の兵隊たちは、お化けの仕業だと思い、恐れて逃げたのだった。
すかさずピーターとスーザンが、小人を助ける為にボートまで泳いで行き、ボートを岸まで引き寄せた。
エドマンドが小人の縄を切ると、「やぁ、噂はともかく、あなたがたは、お化けのようじゃないな。とにかく、あながたがお化けであってもなくっても、命を助けてもらって、ありがとうございます。私は、お化けの話なんぞ信じたことはないけどね。」と、縄から自由になった手足を擦りながら、小人はお礼の言葉を言うのだった。
小人は、胸板が厚く、ずんぐりむっくりした、身長1メートルくらいの普通の小人だったが、赤毛で、頬ひげと顎ひげが生え、鳥のくちばしのような鼻とキラキラ光る黒い目をしていた。
ピーターが「なぜ、あの二人は、あなたを溺れさそうとしたんです?」と、小人に事情を聞こうとすると、「私は、いたって危険な犯人らしい。まぁ、これには長い話があるんだが。」と言いながら、なぜか小人は愉快そうにしている。
「ところで、死刑になるとお腹が空くのをあなた方は知らないらしいな。さっきからあなた方が朝食を誘をないことを不審に思っておりますが。」と言う小人に、リンゴしかないことを憂うつそうに話すルーシィ。
「リンゴだけの朝食も何もないよりはましですけど。でもそれじゃあ、ボートの中で見かけた釣り道具で魚を釣って、取り立ての魚の朝食を、私の方がご馳走することになりますね。」と、小人が魚釣りを提案する。
そこで四人兄弟と小人は、テルマール人たちにボートが見つからないように海に漕ぎ出し、釣りを始めると、なんとニジマスの大魚だった。その虹色の美しい魚は、ケア・パラベルの城で、ピーターたち四人が昔よく食べたことを思い出させるのだった。

なんでもできるその小人は(小人はいったいに器用です。小人の悪人というのはありますが、小人の愚か者というのは聞いたことがありません)、魚を開き、中をきれいにして、こう言いました。「こうなると焚き火が欲しいものですね。」「城に行けばあるよ。」とエドマンドが言いました。
すると小人は、低い口笛を一つ吹いて、「これは、おどろき、桃の木!」と言いました。「それじゃ、本当にお城があるんですね?」「跡だけですけど、ね。」とルーシィ。
小人は、その顔に激しい好奇心をたぎらせて、四人の顔をじゅんに見回しました。
「それでは、あなたがたは―」<CSルイス著*瀬田貞二訳>
なぜか、ここで言葉を切った小人は、「なにわともあれ、まずは朝食にしましょう。でも食べる前にひとつだけ、皆さんに胸に手を当てて、誓って頂きたい。ところで、本当に私は生きてるんですか?それとも、この5人ともみんなお化け?」
四人は、愉快でだじゃれ好きな小人をケア・パラベルの城跡に連れて行き、焼いたニジマスで朝食を済ませると、小人は今までのいきさつを話し始めるのだった。

テルマール人に攻め込まれているナルニア国
この頃のナルニアは、テルマール人と呼ばれる人間達に治められていた。そして、ものを言う動物達は、テルマール人を恐れて姿を消してしまっていた....。

カスピアンという名の王子が、ナルニア国の真ん中にある城で暮らしていた。
カスピアン王子の父親も母親も早くに亡くなり、王子は、テルマール人である叔父のミラース王と叔母の赤毛の三角スモモ女王に育てられていた。
しかし、叔母の女王に子どもができた時から、叔父のミラース王と叔母の女王の態度が一変する。カスピアン王子に変えて、自分達の実の子に王の位を継がせようと、彼らが企んだからである。そして、ミラース王と女王は、カスピアン王子が邪魔になり、殺そうとするのである。

カスピアン王子は乳母から、今はテルマール人が支配していても、このナルニアは偉大なアスランの国であり、昔は、動物 も木々もしゃべることができたと聞き、そのナルニアにカスピアン王子は、強く心が惹かれていた。
しかし、叔父のミラース王は、昔ナルニアで暮らしていた言葉をしゃべる動物達や、木の精ドリアードや小人達の話を非常に嫌っていた。偉大なアスランの話には、敵意さえ見せていたのだった。
カスピアン王子に昔のナルニアの話をした為に、首になった乳母の代わりに寄越されたのが、コルネリウス博士だった。そして、コルネリウス博士は、カスピアン王子に真実を語るのである。
その時カスピアン王子は、ミラース王や叔母を嫌ってしまう自分の感情や、ナルニアの復活を願う強い感覚に、初めて納得できたのだった。
ある日、コルネリウス博士からカスピアン王子は、ミラース王の企らんだ王子暗殺の危険が今にも迫っていると聞き、愛馬デストリアに乗って城を出て、ナルニアの復活を目指すのである。

ナルニアは、アスランの国。アスランは、朝日が昇る東の果ての海の彼方からやって来る。アスランとは、海の大帝の息子であり、全てを従える百獣の王ライオンである。
また、ナルニアの国は、アスランの為に、アスランから任命された人間の子供たちが治めていた国。その名は、ピーター王、スーザン女王、エドマンド王、ルーシィ王である。
昔、白い魔女がこのナルニアの国の支配者となり、いつもいつも冬にしていた。
そこへ、アスランと四人の兄弟たちが現れて、白い魔女の悪の力を打ち破り、冬に変えてナルニアに春が訪れたのだった。そして、アダムの息子二人とイブの娘二人が、ケアパラベルの城でナルニアの王と女王となり、彼らがナルニアの国を治めている長い間は、みんな幸せに暮らすことができていた。

アスランこそナルニアの主。そのことをかたく信じていたカスピアン王子は、コルネリアス博士からもらった、誰が吹きならしても不思議な助けが来るという角笛を、ナルニアの危機を知って吹きならすのだった。その角笛の音は、激しい雷のように力強く轟き、それでいて心地良く、水の上を渡る音楽のように涼やかに響き渡った。

雷のように轟き響き渡る角笛の音を、あたかも神の声が、この世界中の地の上に御心を成せと響き渡るかのような聖書の描写を用いて、CSルイスは描いている。
聖書の黙示録には、神の声はラッパの音のようであり、雷のようであり、また、大水の轟きのようであると書かれているのである。<黙示録1:10.13.4:5.など>
聖書では、角笛は、指導者が国民に新年を告げ知らせたり、民の召集の為に使われる。
最高の指導者(リーダー)は、もちろん神ご自身である。
また、ラッパ吹きの預言者というのが聖書のエゼキエル書に出て来るが、見張り人としての役割があり、イスラエルの国や民に、危機を知らせる務めがあるのである。
(角笛について詳しくは、当ブログ2014.2.13日*聖書研究はディナーの後で*ソロモン*参照)

カスピアン王子がナルニアの危機を知らせ、助けを呼び求める角笛の音は、まるで海の彼方の大帝か、アスラン自身が、「ナルニアの地に使命を果たせ!。」とでも言うように、ナルニアの全地に響き渡り、四人の兄弟をナルニアに呼び寄せたのだった。

アスランとピーターたち四人兄弟との再びの出会い
ピーターたちは、小人のトランプキンからカスピアン王子の今までのいきさつを聞いて、なぜ自分たちがナルニアに呼び寄せられたかがわかったのである。
小人のトランプキンは、カスピアン王子の角笛によって助ける者が来る可能性の高いケア・パラベルの城跡に遣わされたのだった。
「そんなわけで、私は朝早くから森の中を歩き続けました。すると、忘れることのできないような心地良い、凄く不思議な音が聞こえてきたのです。思わずひとりごとを言いました。あの音が角笛でなけりゃ、俺をとんまと呼んで良いってね。」小人のトランプキンは、その後もケアパラベルの城に向け一心に歩き続けたのだが、つい近道をしようとテルマール人の兵隊に捕まってしまい、溺れさせられようとしたところをピーターたちに助けられ、昔ケア・パラベルの城の王と女王だった四人兄弟に会えたのだった。

ところが、トランプキンはこう言う。「それはそうと、これからどうしますかな?
私は、カスピアン王子に助けは参りませんと、申し上げるのが良いと思いますけど....
ふん、ふん―まさにこの目で見てはいるんだが....とはいえ、そのぉ、つまり―そのぉ、確かに、昔の話に出てくる四人の子どもたちにお会いできて幸せなんですが....。
確かに気もそそられるし....ええ、ええ、そのぉ、悪気はないんで。―でも、ご存知のように、カスピアン王子もコルネリウス博士もみんな、待ち望んでますんで―そのぉ、おわかりでしょうが、助けをなんだな....。英雄が来るのを期待しているとも言えると思うんだが―。
つまり、そのぉ―私たちはみんな子どもが大好きで、大歓迎なんだけども―、でも今は、そのぉ―戦争の最中ですから、そのぉ-。どうか、お気を悪くなさらないように願いますよ、お小さいかたがた。」
「でも、角笛の力が働いたから私たちが来たのよ。」とスーザン。
「あんたは、ぬけさくよ。」とルーシィ。
「つまり、僕たちではダメって言うんでしょ?。君から、お小さいと言われるとは、あんまりだ....。僕たちが昔、戦いに勝利していたことも信じないんでしょ!なんとでも勝手に言えば言いよ。」と顔を真っ赤にしてエドマンド。
小人のトランプキンに子どもたちは憤慨するが、冷静なピーターの作戦によって、トランプキンは大笑いしながら、四人の子どもたちがカスピアン王子の角笛によって来た助けであることを認めることになる...。

みんなで宝倉に行き、小人トランプキンに合う剣と楯とかぶと、くさりかたびら、弓と矢を選ぶと、エドマンドが丁重に小人トランプキンに、剣のお手合わせを申し込む。
両方の剣が素早く抜かれると、見ごたえのある試合が始まった。
エドマンドが、見事な手首返しを使って剣を閃かせると、小人トランプキンの剣は手離れて宙を舞った。
小人トランプキンは、手首をよじりながら「いやはや、一本とられました。」と無念そうな有り様。そこへピーターがこう言う。
「たとえ、世界一の剣士でも、あのような新手の技では、武器を取り上げられてしまう。ところで、他のことでも小人トランプキンの腕前を見せてもらうのが公平だと思うが、どうだろう?あなたは、妹のスーザンと弓の試合をなさいませんか?」
ピーターの作戦に薄々気づき始めたトランプキンは、「いやはや、皆さん冗談がうまい!」とぶっきらぼうに言いながらも、どこか期待で目を輝かせている。
そして、小人仲間で一番の弓の名手と言われているトランプキンは、とにかくスーザンと試合をすることに。
「的は、あの壁の上の枝のリンゴではどうかしら?」とスーザン。
「リンゴと言うよりサクランボみたいだな。」と小声で言う沈んだ顔のトランプキンだが、大声でいやとは言わず、弓を構える。
弓の名手であるトランプキンの矢はリンゴをかすめただけだったが、スーザンの矢は見事にリンゴに命中する。
今度は、小人のトランプキンの傷に気づいたルーシィが、サンタクロースにもらったガラスの瓶から薬を一滴た垂らすと、たちまち小人トランプキンの傷が治ってしまった。
「驚き、桃の木、山椒の木!」トランプキンは飛び上がって喜びながら、「いやはや、私は、どんな小人よりも間抜けだ。王と女王の皆さんの教訓に心からお礼を申し込上げます。」と大笑いしている。
エドマンドの剣の腕前やスーザンの弓の名手ぶり、おまけにルーシィの名外科医ぶりまで見せられて、小人のトランプキンは、彼ら四人こそが助けに来た英雄であることを信じるのだった。
そして、彼らは、カスピアン王子とナルニアの国を助ける為に、アスラン塚に向かうことにする。アスラン塚とは、ライオンと魔女の物語に出てくる石舞台である。

始めのうちは、うまく行くように思いました。一同は、昔の道に当たったと思いました。......ピーターが言いました。「この道をやって来たのが、僕の間違いだ。道に迷っちまったなあ。こんなところは、昔見たこともないぞ。」....
「ほら、ほら、あそこ!」出し抜けにルーシィが、叫びました。「どこ?何?」と皆が尋ねました。
「ライオンよ、」とルーシィが言いました。「アスランなのよ。ほら、見えないこと?」ルーシィの顔はがらりと変わり、その目は輝いていました。....<CSルイス著*瀬田貞二訳>
でも、エドマンド以外はルーシィの言うことを信じなかった。
そこで、皆は、アスランが導いた道とは違う道を行くことになってしまう。しかし、ミラース王率いるテルマール人の軍隊に攻撃され、もう一度、もとの渓谷に戻ることになる。

苦労しながら渓谷まで戻ったみんなは、とにかく夕食を取ることして、小人トランプキン考案のメニュー、炙り肉のリンゴソースかけを作ることに。
まるごと一つのリンゴを、途中でしとめた熊の肉で包み、木の枝で刺して火であぶると、あぶり肉のリンゴソースかけの出来上がり。小人のトランプキンは、一流レストランのシェフ並みの腕前を発揮したのだった。
みんなは、そのおいしい夕食に満足した後、トランプキンのパイプの煙をながめながら、眠りについた。

「 ルーシィ。」と、お父さんでも、ピーターでもないその声が、また呼びかけました。....
ルーシィは立ち上がり、そちらの方に歩いて行きました。....
ああ、なんと嬉しいことでしょう!そこに、あの人がいたのです。あの大きなアスランが、月の光を白々と浴びて、足もとに黒い影を落として!....
「ああ、アスラン、アスラン、大好きなアスラン。」ルーシィはすすり泣きました。「とうとうお会いできましたね。」<CSルイス著*瀬田貞二訳>

アスランは、ルーシにしか見えなかった。
ピーターたちには、見えなかったのだった。疲れや、イライラ、臆病、によって見えなかったのかもしれない。
アスランはルーシィに、「みんなを起こして、自分についてこさせるように。そして、もし、それでもみんなが来ないのなら、その時は、ルーシィひとりでもついて来なければならない」と告げる。

「みんな、一緒に来て欲しいの。だって、だって私、みんなが来ようとこまいと、アスランと一緒に行かなけりゃならないの。」.........
「さ、行こう。」今度はエドマンドが憤慨しました。「行かなけりゃ平和が来るものか。」....
「それでは、出かけよう。」ピーターが言って、うんざりしたように、楯の革ひもに腕を通して、かぶとをかぶりました。.....こうしてとうとう一同は歩き続けました。....
アスランは向こう向きになって、一同の30メートルほど先を、ゆっくりした歩幅で歩いて行きます。....ライオンは、踊る木々のむれの右手に導きました。....
ルーシィは、立ち止まって考える暇もなく、ただひたすらに、アスランを見失うまいと思い続けていました。......
今度はエドマンドが見つけました。「ああ、アスランだ!」....
ためらうことなく、アスランは、渓谷を離れて、左の方へ登って行きました。この旅で見るものはすべて、風変わりで夢のようでした。音高く流れる川、湿った黒い草、今近づいて行く、月光を帯びた崖、そして、いつも堂々と音もなく先頭に立つ大きなけものー
このライオンを、今はスーザンと小人を除いて、すべての者が、見ることができました。....
「ルーシィ。」スーザンが聞き取れないほど小さい声で言いました。「何?」
「やっと、あの人が、見えたわ。」「あら、いいのよ。」
「でも、あんたが気づいているよりも、もっと私はひどい事をしたの。本当は私、あの人だなと、昨日、わかったのよ。....それから、今夜あんたが起こした時も、本当にすぐ、あの人だなとわかったわ。それは、心の奥の方でそう思ったということなの。私がもっと深く考えれば、良かったのよ。でも私は、やたらに、あの森から抜け出したかったの。...」<CSルイス著*瀬田貞二訳>

救い主イエスは、霊の目を開く方である。
イエスキリストがこの世に来られたのは、私たちの霊の目を開き、暗闇の支配から光の支配に、サタンの支配から神に立ち返らせ、イエスを信じる信仰によって、私たちに罪の赦しを得させ、聖なる者とされた人々の中にあって御国を受け継がせる為である。<使徒の働き26:18より>

しかし、それが一度に全て起こるかどうかについて、アスランとルーシィのこんな会話がある。
アスランが、ルーシィに再び出会ってからすぐの話である。

「他の人にもあなたが見えるでしょうか?」
「はじめは、見えないだろうね。」アスランは答えました。「人によって、だんだん見えるだろう。」<CSルイス著*瀬田貞二訳>
イエスキリストが盲人を癒された時も、一度に見えた人もいるが、少しずつ徐々に見えた人もいる。霊の目も同じである。

ピーターには、一の王としての責任感があった。
スーザンは、臆病風に吹かれていた。
エドマンドは、初めてナルニアに来た時にルーシィの言うことを信じなかった為に失敗した事から、今度は、ルーシィの言うことを信じようと思っていたが、投票で道を決めようと提案する。しかし、最後にはたとえピーター王たちに逆らっても、ルーシィと共に行くと決断したのである。
もちろん、ルーシィにはアスランが見えていた。

しかし、ルーシィがアスランに、誰も自分の話を信じてくれなくて、アスランの所へ行くことができなかったと言った時のことである。
ルーシィはアスランに、たとえ皆と離れることになっても、ひとりででもアスランの所に来るべきだったと言われてしまう。
霊の目が開かれるのが、一番早かったルーシィにはルーシィなりの課題があるらしい。
そう考えると、霊の目が開かれるのが早いか遅いか、そのどちらの方が良いというよりも、人はその立場も経験も違うし、性格も人それぞれである。
だから、神は、私たちひとりひとりに合った方法をとられるのだと思わされるのである。

まもなく一同は、....大きな丘アスラン塚を見ることができました。それは、子どもたちがいた時代の後に、石舞台の上に築かれた山でした。....
アスランが、立ち止まって、くるりと振り向いて、威風堂々と一同に向かい合いましたので、子どもたちは、この上なく畏ろしく、またこの上なく嬉しく思いました。....
「ああ、アスラン。」とピーター王は、片膝を着き、ライオンの前足を、自分の顔におしいただいて、「とても嬉しいんです。と同時に、まことに残念です。私は、出かけてからこのかた、ことに昨日の朝から、一同を間違った方へ導いてしまいました。」
「我が子よ。」アスランはそう声をかけ、次に、エドマンドの方を振り向いて、「良くやった。」と言いました。
その後に、恐ろしい沈黙があって、深々とした声が、「スーザン。」と呼びました。...
「臆病神の声を聞いていたんだね。我が子よ。」アスランが言いました。「おいで、わたしの息をかけてあげよう。臆病神のことは忘れなさい。もう勇気が出て来たかな?」
「はい、少しはアスラン。」<CSルイス著瀬田貞二訳>

月が沈み、まことの夜明けをナルニアは迎えようとしていた。
そして、アスランに命じられて、ピーターとエドマンドは、小人のトランプキンと共に、カスピアン王子を助ける為に塚山へと向かうのだった。
塚山とは、石舞台のあるアスラン塚のことで、そこでアスランはエドマンドを救う為に白い魔女によって殺され、復活したのである。そして、ナルニアに春が訪れたのだった。
ナルニアに古くから伝わっていた言い伝えが成就したのである。

アスラン来たれば、あやまちは正され、
アスラン吼ゆれば、悲しみ消ゆる。
牙が光れば、冬が死に絶え、
たてがみ振るえば、春たち戻る。<CSルイス著*瀬田貞二訳>

ルーシィとスーザンは、アスランに寄り添いながら塚山に向かうピーター達を見送った。その時、東の空にナルニアの明けの明星であるアラビルが、ひときわ大きく輝いていた。
(明けの明星については、当ブログの2013.12.18日、明けの明星参照)
アスランが、たてがみを揺すりながら凄まじい雄叫びをあげると、その御声に大地も大気も震え、アスランのその声はナルニア中に響き渡った。
すると、目覚めた木々たちが、アスランに向かって挨拶を交わしながら「アスラン、アスラン!」と呼びかけては、おじぎをするのだった。
今や、ナルニア中が目覚め、復活し始めたのだ。
それはまるで、木々たちは死んだように動かず、動物たちはものも言えなくなり、死んだようになっていたナルニアに、アスランが死から復活した、その復活の命がナルニア国全土に流れて行くようであった。
ナルニアの土地は、豊かに香り高いブドウの実を実らせ、バッカスたちまで現れて勝利の宴会が始まる。

そして、カスピアン王子は、アスランと四人の兄弟の助けを得て、ナルニアを長年支配してきたテルマール人の圧政を終わらせ、ナルニア国を甦らせることに成功するのである。
カスピアン王子が、アスランの助けがナルニアに必ず来ると信じ抜いたことが、ナルニア国に真の勝利と復活をもたらしたのである。
アスランが、ナルニアの国を歩いて行くにつれて、ナルニアの国は復活し元通りへと変わって行った。

アスランとカスピアン王子との出会い

「こちらがカスピアンです。」とピーターが言いました。カスピアンは、膝まずいて、ライオンの足先にキスしました。
「ようこそ、王子よ。」アスランが言いました。「あなたは、我こそナルニアの王位につくにふさわしいと自分で思うかな?」
「いえ、いえ、そうは思いません、アスラン。」とカスピアン。「私は、まだ子どもでございますから。」
「よろしい。」とアスラン。「自分からふさわしいと思い込んでいたら、それこそふさわしくないしるしなのだよ。
それでは、我らの下、一の王の下にあって、ナルニアの王、ケア・パラベルの領主、離れ島諸島の皇帝であるがよい。あなたの種族の続くあいだ、あなたとあなたの子孫が、その位にあることにしよう。
そして、あなたの王冠式はー....」<CSルイス著*瀬田貞二訳>

アスランは、カスピアン王子を祝福し、カスピアン王とその子孫に代々ライオン王の位を授けたのだった。

聖書では、ダビデ王がカスピアン王のモチーフ。
アスランが、カスピアンにナルニア国の王位を授けたように、神によって、イスラエルの国の王位を与えられたのが、ダビデである。
神は、ダビデとダビデの子孫とに、代々王の位を授けると約束されたのだった。
(神とダビデとの約束.ダビデ契約については、当ブログ2013.12.25日*V III ~X使徒の働きユダヤ人へのメッセージ.ダビデ契約*参照)
ダビデは、神を愛し、神の為に戦い、神の御心に仕えた人物だった。
それゆえ神は、ダビデに豊かな祝福を与えられ、大いなる名を与えられたのである。<創世記12:2.第2サムエル7:8.9参照>

カスピアン王子が、アスランによってナルニア国を復活させる内容においては、聖書の<エレミヤ33:6.7>の御言葉がモチーフとなっている。
"見よ。わたしはこの町の傷をいやして直し、彼らをいやして彼らに平安と真実を豊かに示す。わたしはユダとイスラエルの繁栄を元どおりにし、初めのように彼らを建て直す。"<エレミヤ33:6.7>
聖書のエレミヤ書では、神がユダの家とイスラエルの家に語ったいつくしみの言葉を成就され、ダビデ王のために、ユダの獅子救い主イエスによって公義と正義が行われ、エルサレムの町もイスラエルの国も復活すると書かれているのである。

0 件のコメント:

コメントを投稿