2014年2月9日日曜日

エステル記 ちょっとした学び


おもしろブログ特集

エステル記


エステル記は 神の摂理と神の御手の書簡である。
摂理とは統治することであり、キリスト教では 、世界の全てのものを支配して導く 神の意志、恩恵である。

さて、ここで一つのユダヤ民謡を紹介しよう。

時計屋と侍女


宝石 で飾られた帽子

ある曰、王妃は、町の大浴場に侍女を連れて出かけた。大浴場に着くと、王妃は服を脱ぎ、ルビーや真珠などの宝石で飾られた帽子を脱いだ服の中に隠した。
大浴場に入ると へちまで背中をこするよう侍女に言いつけた。
しかし、侍女は言った。「王妃様の服を見張っていなければなりません。盗まれるといけませんから。」
王妃はそれでも、背中をヘチマでこするように侍女に言いつけたので、侍女は言われ通リにやって、侍女は先に外に出た。そして宝石のついた王妃の帽子を取ると、自分の頭にのせ、その上から薄布を巻いて隠してしまった。
大浴場 から出た王妃は 帽子のないことに気づき「おまえは私の高価な帽子を知らないかい?」と侍女に尋ねた。
「知りません。だから、放っておいてはいけません と申し上げたではありませんか。大浴場はいろいろな人が自由に出入りしますから。」

王妃は城に帰ると、怒りながら王にその話をしたが、王は「長い間城に務めている あの侍女が盗ったとは思えない。しかし、 もし、お前が首にするのなら 、役人に言って売り飛ばそう。」こうして 、侍女は売り飛ばされることになったのだった。

「誰かこの女を買わないか。売るにはもったいないが、買った者も 悔後しよう。」
町の人々は皆、きみ悪がってこの女を買おうとはしない。
さて、町に一軒の時計屋があった。時計屋の 男は、 その売られている 美しい女にとても魅かれたのだった。
事の 成り行きを 、時計屋が役人に尋ねると、「侍女は城務めをしていたが売られることになったのだ。金200つぶの代金を払えば、誰であろうと この女を自分のものにできるのさ。」と言った。
それを聞いた時計屋は、ふところから金10粒を取り出し、それを役人に渡しながら、
「ここに10粒の金がある。残りの190 粒は、後で 夕方に家に取りに 来てくれ。」
そう言って自分の店にその女を連れて帰った。

時計屋 は侍女をそばに座らせ、仕事を始めたが、お昼時になったので、男は上等な食事を通リの売り子に持って来させ、二人で一緒に食べた。
その後、男は黙って仕事を始めた。

やがて、時計屋は深いため息をついた。 しはらくすると、時計屋は頭を垂れて泣き始めた。
しかし、今度は涙をふきながら、声をあげて たっぷりと笑っのだった。
侍女は驚いて見ていたが、男の心の中が知りたくてたまらなくなって言った。
「本当のことをおしえてほしいの。なぜため息をついて泣いたの?。それでいて 最後に笑
ったのはなぜなの?」
時計屋はその分けを言いたくなさそうだったが、女に再びせがまれて仕方なく話し出した。
「私は君に心を魅れて、君を買った。しかし 、先に役人に払ったのが 、私の有り金の全てだった。たとえ全財産をはたいても残りの19O粒は工面できない。だから、ため息が出たのさ。そして、君と別れなければならないのか と思う涙が出たんだ。でもね、 最後に私は
神を見上げたのさ。
「神は惠深く、隣れみに満ちた方だから、何とかしてくださるかもしれないと思うと笑えてきたんだ。神にあっては、希望も喜びも消えないからね。」
「私は王妃の侍女をしていたの。あなたが本当のことを言ってくれたので、私は結婚してあなたを助けるわ。」
そして、侍女は 頭にかぶっていた布の下に手を入れて、帽子から宝石を1つ取って時計屋に渡した。「これを市場に持って行き 、金職人の親方に会って売ってきて欲しいの。 でも金4千粒以下でを売ってはダメよ。売れたら市場で2頭の良い馬と水と食べ物とで、馬のくらを一杯にしてきて頂戴。それとふたりが着る 新しい服を買って来て。
そして貴方が戻ってきたら役員に残りの金19O粒を払い、 明日の朝 ここを出ましょう。」
それを聞いた時計屋は、喜びならさっそく町へ出かけて行った。

宝石を売ると、それはなんと4千粒以上で売れたので、彼女の言うとおりにして戻って来た。
こうして、男は役人に残りの金190粒を払うことができたのだった。女は残りの金の粒を馬のくらにしまった。

次の朝早く、ふたりは、イスラエルの神、唯一まことの主に祈ってから、馬に乗って町を出た。そして、ひたすら砂漠の中をかけ抜けたのだった。
2日も走りどおしだったので、ふたりは馬を休ませ、食事を取ることにした。
二人はとても疲 れていた。
時計 屋は妻に言った。「私の膝を枕にして眠りなさい。そのあとで 私も眠るから。」
妻は男の言うとおりにして 眠った。
男も眠りたかったが、馬をそのままにして番もせずに眠るわけにはいかなかった。
眠れなかった 夫は、妻の髪の毛でもすいてやろうと思い、そこで妻の頭にかぶせてある 薄いベールを取ったところ、その下から高価な宝石が散りばめられた 帽子が出てきたのだった。
時計屋は、「これほど大切なものをその辺に置いておくわけにはいかない。 汚れないように 木にかけよう。」と思い、立ちあがってその帽子を木にかけた。
それから 再び妻の頭の 細かい 砂ぼこりを取ってやった。

そのとき突然カラスがやってきて、木に掛けた 帽子を口ばしでくわえると飛び去った。
驚いた夫はカラスを追いかけたが、 カラスはますます空高く 飛んで行ってしまった。
男が戻ると妻ばまだ眠ったままだった。
男は妻に何と言って説明しようかと考えたが、こんな話は とても信用してくれない と思い、帽子が見つかるまで探しに行こうと決心した。
持ち物や食べ物は 妻のためにの残しておき、妻に黙って 男は馬に乗り、 カラスが飛んで行った方へと馬を走らせた。

狼が出る森の中で

ガラスが持ち去った 帽子を探し 見つからないまま、2日たってようやく男は町に着いた。2日、男は何も食べていなかった。そこへ、荷台に肉とコンロを載せて、焼肉屋がやって来た。
町の人々は、次々に焼き肉を買って行った。男はそれをずっと見ていた。店も終わり帰ろうと した焼肉屋の主人は、まだ立ったままでこっちを見ている男に目を止めた。
「お前さん。なんでそこに立ってこっちを見ているんだ?」
そう聞かれて 時計屋は「どうか、私に仕事をください。食べる物も寝るところもないのです。」
焼肉屋は、真面目そうな時計屋を見て雇うことにして、家にその男を連れて帰った。

焼肉屋は妻に、食べる物と寝るところを時計屋に用意するように言った。こうして、 時計屋は焼肉屋の見習いとなった。
次の日から、時計屋が一生懸命まじめに働くので、焼き肉屋はたいへん満足そうだった。
ある日、男は焼肉 屋の家にきた人々が、少しずついなくなっていることに気がついた。

男は焼肉屋にたずねた。「これはどういうことですか?」
「関係ないことにロを出すな」と話そうとしない 焼肉屋だったが、しつこく時計屋が尋ねると、
「この先に大きな森がある。私が先祖から受け断いだ森なんだが。残念なことに水が出ない。だから、水を探しに行くと言う者に、私は40曰分の食糧を持たせ、旅に出すのだ。
ところが、あの森は深く迷ったら出て来れない。おまけに 2頭の大きな狼が住みついていて、4O曰たっても水を見つけられなかった者は、 この狼たちに食われてしまうというわけだ。
もし、水の出るところを見つけた者には、金でも銀でも、宝石でもくれてやるんだが。」

それを聞いた時計屋は、水を探しに 無精に出かけたくなったが、焼肉屋は まじめに働くこの男を失いたくなかったので、承知しようとしなかった。
しかし、あまりにも時計屋がしつこく頼むので、焼肉屋は男の身体にロープをつけ、迷っても森から出てこれるように計って 4O曰分の食料を持たせた。
そして 、この男の幸運を願って、水が掘れるように と鍬と鋤きを持たせてやった。

時計は、森の奥深くへと入って行った。さんざん歩いて掘ってはみたが、何処でも必ず大きな岩に突き当たってしまい水を見つけることができなかった。

何日かたって、疲れた男は、大きな枝のつき出した木の根もとで、その夜は寝ることにした。その木の根元には大きな岩があった。
真夜中、時計屋は夢を見た。雪のように白いヒゲをはやした老人が夢に現れたのだ。
「この大きな岩を持ち上げると その下に七つの金の壺がある。
その金の壺の下に 湧き水が出る場所がある。そして、お前が探してる帽子はその大きな枝の上にある。」
時計屋は目を覚ますと 「なんだ夢か。夢じゃあ どうにもならない。」
その日も水を探して 掘ってはみるものの、すぐに岩につき当たる。時計は、 もはや諦めけそうになるくらいに疲れていた。

その曰も男は大きな枝のつき出した木の根元の大きな岩のある場所で眠りについた。
すると、再び、雪のようにまっ白いヒゲをはやした老人が現われて言った。
「その大きな岩を持ち上げて水を探し当てなさい。」
その老人の声に目を覚ました男は、 大きな岩を動かそうとしたが 何度やっても ビクともしない。
こんな大きな岩は、神の力なくして どうして動かせようか。
あきらめた男 は再び眠ってしまった。
「起きろ。 お前を探している帽子は その木の枝の上。 お前のさがしてる 湧き水は その岩の下。 最後まであきらめるな。」
雪のような真白いヒゲをはやした 老人のその声にびっくりして起きた時計屋は、今度は必死に岩を動かそうとした。すると、大きな岩が なんだか動いたように思った。
そして、力いっぱい持ち上げると 、なんと神様に しか動かせないようなの大きな岩が持ち上がった。
“このような 正直者と、あなたに、同じような神の祝福がありますように。"
岩の下には7つの金の壺があったのだった。
その下を掘ると、 なんと そこから綺麗な湧水の出る場所があった。そして、みるみるうちに水が湧き出てきたのだった。
今度は、男は急いで大きな木の 枝に登ってみると、あの帽子があったのである。
さっそく男 は、 その帽子を懐に入れ、身体についていた ローブをたぐりながら、焼肉屋の主人のところへ走って行き、大声で叫んだ。
「探していた水が出たぞ。」
それを聞いた焼肉屋 は警いて森に走っていくと、 そこにはこんこんと湧き出た冷たい水が 小川となり流れていた。
しかし時計は、宝石で飾られた帽子の事も金の入った壺の事も焼肉屋に黙っていた。
焼肉屋の主人は 大喜びで「よくやったぞ。ほうびに金でも銀でも 宝石でもなんでもくれてやるぞ。」
しかし、男は言った。「欲しいものはありません。でも神様が私に幸運を与えて湧き水をみつけさせてくださったのですから、 一つだけお願いがあるのです。私は国に帰りたいのですが 、私の国では とても高価なものなので、塩を7袋 国に持って帰らせてください。」
欲のない男だと焼肉屋は思いながら男に 7袋の塩を持ってきてやった。

焼肉屋が立ち去ると、時計屋は 袋の中から塩を取り出し、金の壺を 袋の中に入れその上からまた、塩を入れ直した。
しかし7つ目の袋には、金の壺の中にあの帽子を入れてから上から塩をかぶせておいた。
こうすれば金の壺も隠せる し疑われない。 きっとあの帽子を持って妻のところに帰れると男は考えたのである。。
それから、男は7つの袋を ロバに乗せ、港に行き、乗船の予約をして、7つの袋を 船に積み込んでから、船長にことずけした。
私が世話になった 焼肉屋の主人に別れの挨拶をしてからまた船に乗リにきます。
男 は焼肉屋 の所に帰って、お世話になった感謝とお礼を何度も言ったのだった。
それから 再び、 時計屋は 港に戻って行た。ところが そこには 停泊していた船がない。
船はもう港はなれて 既に沖合いを進んでいた。
男は船に向かって声の限り叫んだが聞こえるはずもなく、「俺はなんてまぬけなんだ。こうなったからには、なんとしても 帽子を取り戻すまで帰らんぞ。」
男はそう言って 自分を呪い . 天を見上げたのだった。

再び旅へ

男はまだ旅に出かけた。砂漠をひたすら進んで、次の町へと なんとかたどり着いたのだった。
男は町で仕事はないかと探したが誰も顧ってはくれない。
空腹と疲れで動けなくなった男は街の片隅で しょんぼりと座り込んでしまった。
そこに通りかかったひとりの老後がいた。「おまえさん、 なんでそんなところに落ち込んで座っているのかね。」
男が言った。「私には 食べ物も寝る所もありません。 もし私を顧ってくださるのなら毎日働いてパンを買い幕らしのお手伝いをするのですが。」
「それは嬉しいね。 一緒についてきなさい 。」そう言って老婆は 自分の家に男を連れて行き、二人は親子のように仲良く暮らし始めた。
老婆の 家でも男はまじめによく働いて、朝早くから 山に行って薪を集め、町に売りに行き、帰りに パン や他の食べ物を買ってきて一緒に食べた。二人はまるで本当の 親子のようだった。

今まで起こった事を語り終えると、ふたりは、この事を誰にも話さないと誓い合った。
あくる日も、結婚式の祝宴が続いていたので、ふたりは屋上から、城に来る人々の中に時計屋の姿を探していた。

ハンサムな男に変装した侍女

急に音が姿を消してしまった侍女は あの後どうなっただろう?。
朝になって、侍女が目を覚ますと、夫になった時計屋の姿が見えない。はっと思って 女が頭に手をやると帽子もない。
「まったく男って 本当に信用できない。 結婚までして助けてあげたのに、いなくなるなんて。あげくに 宝石の帽子まで持っていくなんて、 まったくどうかしてるわ。」
侍女は立ち上がると、ひたすら町を目指して馬を走らせた。
昼も夜も 馬に乗って進み続けて ようやくある町に着いた。 しかし、それは計らずも、夫であると時計屋が暮らしてる町だった。
女 は、 馬の鞍からお金を取り出すと通りがかりの男の子を呼び止め、「これで男性の 服 とギターに似た楽器のサズを買ってきて頂戴 」と言った。
男の子は、 男物の服とサズを買ってきた。
侍女はそれを受け取ると男の服を着て 帽子をかぶり長い髮を隠し、 ちょっとイカしたハンサムな男に変装したのだった。
それから町行き、サズを弾きながら 歌い始めた。
これまでに聴いたことがないような歌声にひかれて、町を通りかかった人びと が立ち止まった。
そして毎日、町のあちらこちらから 人々が集まって来て ハンサムな男の美しいサズの音色 や 素晴らしい歌声に聞き惣れるようになった。

ある曰、 王子が狩りに出かけた帰り道、街に人々が集まっている様子を見た。
不思議に思った王子が近づいてくと、胸を打つ様な不思議な歌声が聞こえてきた。
王子が人ごみを掻き分けて前に行くと、ハンサム男がサズを弾きなから歌っていた。
その声は甘く、それでいて時にはもの悲しく、なぜか心を打つのだった。
夜がふけるまで 人々は聞き入っていた。
その日から毎日王子はその男のサズの弾き語りを聞きに通うようになった。

王は、 国を収めるための勉強もせず町 へ出かけてばかりなのを知って、心配をして王子を呼んで言った。。
「王子たるお前が王になるための勉強 もせず、町の歌い手の所にばかり通っているとはなにごとだ 。そんなことは王子のやることだろうか。」
しかし王子は答えた。「お父さまもその男のサズの弾き語りをお聞きになればきっとお分かりになるでしょう 。もし、お許しいただければ、その歌い手を お城に呼んで一緒に暮らしたいのです 。そうすれば 私も 毎日町に 足を運ばずにすみ、 国を統治する為の学問を学ぶことができるでしょう。」
王は、 少し考えると「 よかろう お前がその方が真面目に勉強できるというのなら、その男の歌い手を呼んで一緒に暮らせば良い。」と言った。
こうしてその歌い手 、本当の姿は 時計屋の妻である侍女は城で暮らすように なったのである。
王子と歌い手のハンサムな男は、食事は勉強もなんでも一緒にして過ごすようになりたい 無二の親友となったのだった。
王子が男の歌い手に言った。「今日は港に行ってみようじゃないか。港についた船のセリがはじまるんだ。時々持ち主の不明の荷物があるんだ。みんな運を天にまかせて、その荷物を買うのさ。時々思いもかけず貴重なものが出てきて大喜びするね。僕たちも運を天にまかせてやってみよう。」
二人が港に着くともうセリが始まっていた。
ちょうどその時 、小さな船が港に着いた。 その船の中に持ち主のない塩の袋があった。 それを王子が競り落としたのだった。 王子達が期待してその袋を開けてみると、 そこには塩しか入っていなかった。
その汚れた 7つの袋の中身はすべて 塩だった。
「なんだ全部塩じゃないか、 塩なんかに用はないよ。 さぁ 海に捨てて帰ろう。」とがっかりした 王子の親友のハンサムな歌い手の 男はそれを止めた。
「 運を天にまかせて買ったの だから、この塩の袋を捨てると 僕たちの運まで捨てることに なりかねない。」
そこで二人は塩の袋を城まで運ばせ、蔵の片隅に置いておいた。

それから 何年から過ぎた ある日のこと、 王が王子を呼び寄せた。
王は、「 お前は隣の国の王女と結婚しなさい 。そろそろお前がこの国を治める時が近づいている。」
すると王子は「父よ。私はこの親友が結婚するまで、結婚したくありません。 ふたりはいつも一緒でしたから親友と一緒に結婚式を挙げたいのです。」
驚ろいた 王は、「もしお前の親友に結婚の相手がいなければどうすのだ 。」と言ったが、王子も なかなか譲らない。「それでは 私の妹と結婚させれば良いではありませんか。」
怒った 王は、「お前の妹は王女なのだ。どうして素上のはっきりしない男に嫁がせることができよう。」と言った。
「それでは妹を呼んで、親友と結婚したいかどうか聞いてみようではありませんか。」と 王子は答えた。
王子はすぐに妹を呼 び寄せた。
王と王子が 事の成り行きを話して説明すると、 あのハンサムの男に心を魅かれていた 王女は「お父様。 私はあの方と結婚いたします 。」と答えたのだった。
王は困ったがいまさら どうすることもできなかた。
王子は親友を呼び寄せると、「君は僕と一緒に結婚式をあげるんだから、僕の妹と結婚したまえ。」と言った。
「ありがたい話だが、 僕は結婚したくないんだ。君だけ結婚すればいいじゃないか。」
そう言って 親友が断わったが、ゴリ押しの王子に押し切られてしまう。
「それはできない 。妹が君と結婚したがってるんだ。だから来週、僕と隣国 の王女、君と妹とで一緒に結婚式を上げるのさ。」

こうして、国をあげての結婚式が行われ、七日間宴会がひらかれた。
王は、町の人々に ごちそう振る舞おうとおふれを出すことにした。
この街の者は皆、誰でも白にやってきて ccnaものが食べたい 喉がかわいてるものは飲み、歌って 踊って 楽しむが良い。神がこの町すべての者に楽しみを分かちあってくださるように。

困ったことになったハンサムな男に変装した時計屋の妻だったが、町中の人々が城を訪ねて来るのを見て、私の夫がこの町にいれば会えるかもしれない。と考えていた。
そこで、時計屋の妻は、王子と王子の花嫁と、王子の 妹と共に、町 からやって来る人々を眺めていた。

その日、お祝いが終わると時計屋の妻は、 自分の花嫁となってしまった王子の妹と一緒に部屋に入ることになっていた。

部屋に入った花嫁は、花婿が優しい言葉をかけて 自分に近づいてくるのを待っているものだ。しかし、王子の親友である 花婿は、椅子から立ち上がるともせず目をふせていた。
王子の妹である 花嫁は不思議に思って、花婿に尋ねたのだった。
「私と結婚したことが、気にいらないのかしら?。それともどうかされたのですか。本当のことをおって頂戴。」
「本当のことを話しますが、どうか、誰にも言わないと誓って下さい。」
そこで、花嫁が父の王冠にかけて誓う と、花婿は重たい口を開いて語り出した。
実は、事情があって 私は変装しているのです。
花婿は、かぶっていた 男物の帽子を脱ぎ、見ての通り 私は女なのです。と、長い髪を現わしたのだった。

侍女が今まで起こったことを語り終えると、二人はこのこと を誰にも離さない と誓いあった。
明くる日も 結婚の 祝宴が続いていたので、 二人は屋上から、城に来る人々の中に時計屋の姿を探していた。

片方だけのイヤリング をした老婆

一方 、こちらは親子のように 一緒に暮らすようにになった時計屋と老婆。
ある日時計屋は、町で片方だけのイヤリングが落ちているを見つけ、老婆に渡して、 「お母さん これをあげるよ 。」と言った。老婆はとても喜んでいた。
城で祝宴があるとの王のおふれを見た老婆は、時計屋に貰った片方だけのイヤリを身につけ、息子を誘って言った。「一緒に城の祝宴に出かけようよ。」
「お母さん一人で行ってよ。あんな馬鹿騒ぎは我慢ならないよ。」
そう息子が言ったので、老婆は1人で城へと出かけて行った。城に行き、食べたり飲んだりして楽しんだ後で、老婆は立ちあがって 踊り出した。
屋上から眺めいていた王子 や王女たちは、イヤリングを片方だけ身につけて 踊ってる 老婆を不思議に思った。

そこで、老婆を家来に連れてこさせると、「なぜ、イヤリングを片方の 耳にだけにつけているのか。」と王子が尋ねると、老婆は答えた。「これは息子が私にくれたものです 。本当は、息子は実の息子ではありませんが、私のことを気にかけてくれるのが嬉しかったので、結婚式の祝宴につけてきたのです。」
「その息子はどこに居るのか?」と王子が尋ねた。
「実は、私は、息子と一緒に祝宴に来たくて誘ったのですが、“こんなことには 我慢ならない。〃と言って来なかったのです。」
町中の 人々が喜んで城の祝宴に来ているのに、変わった男だ。そう思った王子は、息子にあって見たくなり、家来を呼んで息子を連れてこさせた。

家来に連れて来られた男を見て、男に変装した侍女は、「はっ」と目を見張った。
侍女にはその男が自分の夫であることが、すぐにわかったのだ。
「事実を話せ。とんでもない目に合わせるぞ。お前が母親から 生まれてから今に至るまで 起こった事全てを、正直に話してみよ。」と、ハンサムな男に変装していた侍女は言った。
「わかりました 。全てをお話致します。」と、時計屋は 、かしこまって 少し悲しい顔を見せながら語りだした。
今までのいきさつのすべての話す 時計屋には、妻のことを思う気持ちが溢れていた。

全ての話しを聞いた時計屋の妻は、驚きのあまり息を飲んだ。
そして、「はっ」と、あることを思い出し、王子に言ったのだった。
「もしこの話が本当なら、港の競りで買った、あの塩の袋が証明するはずだ。」
そして、蔵から 塩の袋が運びこまれたのだった。

その7つの塩の袋の中身を開けてみると、時計屋の言ったとおりに7つの金の壺が入っていた。
そして、最後の7つ目の金の壺の中から、宝石で飾られたあの帽子が出てきたのである。
それを見たとたん 時計屋は 胸が張り裂けそうに叫んだ。
「金の壺は全ていリません。でもどうか、その帽子だけは返してください。私は その帽子を持って妻を探しに行かなければなりません。」
それを閠いた時計屋の妻は、もはや涙をおさえることができなかった。

「神に隠せることは一つも無く、 何事も最後まで人の目をごまかし切れることはありません。」
そう言いながら妻は、かぶっていた男物の帽子を脱ぎました。
その場にいた人々は、王女の花婿が女性であったことがわかり、 驚きを隱せなかった。
そこで王女が「 私は本当のことを知っていたの。彼女が結婚式の夜、 私 に打ち 明けてくれてたいたのよ。」と言ったので、 一同は落ち着きを取り戻して安心した。
変装を やめて時計屋の妻に戻った彼女は、 夫を見つめて言った。
「よく私を見てください。 私はあなたの妻よ。疑ってしまったこともあったけど、 あなたは私が始めに思った通り、 正直な人だった。あなたの妻であることが私は本当に嬉しいわ。」
一部始終を見ていた 王子の驚きは相当なものだったが、 もう一度詳しい説明を聞くと大喜びに変わった。
そして、時計屋とその妻のためにもう一度結婚式をやり直し、 一同は大きな喜びに包まれたのだった。
こうして 、めでたく、ふたりの望みはかなえられたのである。

“あなたも、イスラエルの真の神によって、望みがかなえられますように。”

このユダヤ民謡は、神の摂理と神の御手を現わしていると思われる。

エステル記は、神の摂理と神の御手を現わす書簡である。
さて、エステル記とこのユダヤ民謡。神の摂理と神の御手、どっちがわかりやすい?


エステル記


第1章

クセルクセス王の酒宴
1:1 クセルクセスの時代のことである。このクセルクセスは、インドからクシュに至るまで百二十七州の支配者であった。
1:2 そのころ、クセルクセス王は要塞の町スサで王位につき、
1:3 その治世の第三年に、酒宴を催し、大臣、家臣のことごとく、ペルシアとメディアの軍人、貴族および諸州の高官たちを招いた。
1:4 こうして王は、百八十日の長期にわたって自分の国がどれほど富み栄え、その威力がどれほど貴く輝かしいものであるかを示した。
1:5 それが終わると、王は七日間、酒宴を王宮の庭園で催し、要塞の町スサに住む者を皆、身分の上下を問わず招いた。
1:6 大理石の柱から柱へと紅白の組みひもが張り渡され、そこに純白の亜麻布、みごとな綿織物、紫の幔幕が一連の銀の輪によって掛けられていた。また、緑や白の大理石、真珠貝や黒曜石を使ったモザイクの床には、金や銀の長いすが並べられていた。
1:7 酒を供するための金の杯は一つ一つ趣を異にし、王室用のぶどう酒が、王の寛大さを示すにふさわしく、惜しげもなく振る舞われた。
1:8 しかし、定めによって酒を飲むことは強いられてはいなかった。王の命令によって給仕長たちは、人々に思いどおりにさせていたからである。
1:9 王妃ワシュティもクセルクセス王の宮殿で女のための酒宴を催していた。
王妃ワシュティの退位
1:10 七日目のことである。ぶどう酒で上機嫌になったクセルクセス王は、そば近く仕える宦官メフマン、ビゼタ、ハルボナ、ビグタ、アバグタ、ゼタル、カルカスの七人に命じて、
1:11 冠を着けた王妃ワシュティを召し出そうとした。その美しさを高官および列席する民に見せようというのである。王妃は美しい人であった。
1:12 ところが、王妃ワシュティは宦官の伝えた王の命令を拒み、来ようとしなかった。王は大いに機嫌を損ね、怒りに燃え、
1:13 経験を積んだ賢人たちに事を諮った。王の身辺の事柄はすべて、国の定めや裁きに通じている人々によって審議されることになっていた。
1:14 王は、王の側近で、王国の最高の地位にある、ペルシアとメディアの七人の大臣カルシェナ、シェタル、アドマタ、タルシシュ、メレス、マルセナ、メムカンを呼び寄せた。
1:15 「王妃ワシュティは、わたしが宦官によって伝えた命令に従わなかった。この場合、国の定めによれば王妃をどのように扱うべきか。」
1:16 メムカンが王と大臣一同に向かって言った。「王妃ワシュティのなさったことは、ただ王のみならず、国中のすべての高官、すべての民にとって都合の悪いことです。
1:17 この王妃の事件が知れ渡りますと、女たちは皆、『王妃ワシュティは王に召されても、お出ましにならなかった』と申して、夫を軽蔑の目で見るようになります。
1:18 今日この日にも、ペルシアとメディアの高官夫人たちは、この王妃の事件を聞いて、王にお仕えするすべての高官に向かってそう申すにちがいありません。何とも侮辱的で腹立たしいことです。
1:19 もしもお心に適いますなら、『ワシュティがクセルクセス王の前に出ることを禁ずる。王妃の位は、より優れた他の女に与える』との命令を王御自身お下しになり、これをペルシアとメディアの国法の中に書き込ませ、確定事項となさってはいかがでしょうか。
1:20 お出しになった勅令がこの大国の津々浦々に聞こえますと、女たちは皆、身分のいかんにかかわらず夫を敬うようになりましょう。」
1:21 王にも大臣たちにもこの発言は適切であると思われ、王はメムカンの言うとおりにした。
1:22 王は支配下のすべての州に勅書を送ったが、それは州ごとにその州の文字で、また、民族ごとにその民族の言語で書かれていた。すべての男子が自分の家の主人となり、自分の母国語で話せるようにとの計らいからであった。

第2章

 
エステル、王妃に選ばれる
2:1 その後、怒りの治まったクセルクセス王は、ワシュティとそのふるまい、彼女に下した決定を口にするようになった。
2:2 王に仕える侍従たちは言った。「王のために美しいおとめを探させてはいかがでしょうか。
2:3 全国各州に特使を送り、美しいおとめを一人残らず要塞の町スサの後宮に集め、後宮の監督、宦官ヘガイに託し、容姿を美しくさせるのです。
2:4 御目にかなう娘がいれば、ワシュティに代わる王妃になさってはいかがでしょうか。」これは王の意にかない、王はそうすることにした。
モルデカイとエステル
2:5 要塞の町スサに一人のユダヤ人がいた。名をモルデカイといい、キシュ、シムイ、ヤイルと続くベニヤミン族の家系に属していた。
2:6 この人は、バビロン王ネブカドネツァルによって、ユダ王エコンヤと共にエルサレムから連れて来られた捕囚民の中にいた。
2:7 モルデカイは、ハダサに両親がいないので、その後見人となっていた。彼女がエステルで、モルデカイにはいとこに当たる。娘は姿も顔立ちも美しかった。両親を亡くしたので、モルデカイは彼女を自分の娘として引き取っていた。
2:8 さて、王の命令と定めが発布され、大勢の娘が要塞の町スサのヘガイのもとに集められた。エステルも王宮に連れて来られ、後宮の監督ヘガイに託された。
2:9 彼はエステルに好意を抱き、目をかけた。早速化粧品と食べ物を与え、王宮からえり抜きの女官七人を彼女にあてがい、彼女を女官たちと共に後宮で特別扱いした。
2:10 エステルは、モルデカイに命じられていたので、自分が属する民族と親元を明かさなかった。
2:11 モルデカイはエステルの安否を気遣い、どう扱われるのかを知ろうとして、毎日後宮の庭の前を行ったり来たりしていた。
2:12 十二か月の美容の期間が終わると、娘たちは順番にクセルクセス王のもとに召されることになった。娘たちには六か月間ミルラ香油で、次の六か月間ほかの香料や化粧品で容姿を美しくすることが定められていた。
2:13 こうして、どの娘も王のもとに召されたが、後宮から王宮に行くにあたって娘が持って行きたいと望むものは何でも与えられた。
2:14 娘は夜行き、朝帰って別の後宮に連れて行かれ、側室たちの監督、宦官シャアシュガズに託された。王に望まれ、名指しで呼び出されるのでなければ、だれも再び行くことはなかった。
2:15 モルデカイの伯父アビハイルの娘で、モルデカイに娘として引き取られていたエステルにも、王のもとに召される順番が回ってきたが、エステルは後宮の監督、宦官ヘガイの勧めるもの以外に、何も望まなかった。エステルを見る人は皆、彼女を美しいと思った。
2:16 さて、エステルは王宮のクセルクセス王のもとに連れて行かれた。その治世の第七年の第十の月、すなわちテベトの月のことである。
2:17 王はどの女にもましてエステルを愛し、エステルは娘たちの中で王の厚意と愛に最も恵まれることとなった。王は彼女の頭に王妃の冠を置き、ワシュティに代わる王妃とした。
2:18 次いで、王は盛大な酒宴を催して、大臣、家臣をことごとく招いた。これが、「エステルの酒宴」である。更に、王は諸州に対し免税を布告し、王の寛大さを示すにふさわしい祝いの品を与えた。
2:19 再び若い娘が集められた時のことである。モルデカイは王宮の門に座っていた。
2:20 エステルはモルデカイに命じられていたので、自分の属する民族と親元を明かすことをしなかった。モルデカイに養われていたときと同様、その言葉に従っていた。
2:21 さてそのころ、モルデカイが王宮の門に座っていると、王の私室の番人である二人の宦官ビグタンとテレシュが何事かに憤慨し、クセルクセス王を倒そうと謀っていた。
2:22 それを知ったモルデカイは王妃エステルに知らせたので、彼女はモルデカイの名でこれを王に告げた。
2:23 早速この件は捜査されて明らかにされ、二人は木につるされて処刑された。この事件は王の前で宮廷日誌に記入された。

第3章

 
ハマンの策略
3:1 その後、クセルクセス王はアガグ人ハメダタの子ハマンを引き立て、同僚の大臣のだれよりも高い地位につけた。
3:2 王宮の門にいる役人は皆、ハマンが来るとひざまずいて敬礼した。王がそのように命じていたからである。しかし、モルデカイはひざまずかず、敬礼しなかった。
3:3 王宮の門にいる役人たちはモルデカイに言った。「なぜあなたは王の命令に背くのか。」
3:4 来る日も来る日もこう言われたが、モルデカイは耳を貸さなかった。モルデカイが自分はユダヤ人だと言っていたので、彼らはそれを確かめるようにハマンに勧めた。
3:5 ハマンは、モルデカイが自分にひざまずいて敬礼しないのを見て、腹を立てていた。
3:6 モルデカイがどの民族に属するのかを知らされたハマンは、モルデカイ一人を討つだけでは不十分だと思い、クセルクセスの国中にいるモルデカイの民、ユダヤ人を皆、滅ぼそうとした。
3:7 クセルクセス王の治世の第十二年の第一の月、すなわちニサンの月に、ハマンは自分の前でプルと呼ばれるくじを投げさせた。次から次へと日が続き、次から次へと月が動く中で、第十二の月すなわちアダルの月がくじに当たった。
3:8 ハマンはクセルクセス王に言った。「お国のどの州にも、一つの独特な民族がおります。諸民族の間に分散して住み、彼らはどの民族のものとも異なる独自の法律を有し、王の法律には従いません。そのままにしておくわけにはまいりません。
3:9 もし御意にかないますなら、彼らの根絶を旨とする勅書を作りましょう。わたしは銀貨一万キカルを官吏たちに支払い、国庫に納めるようにいたします。」
3:10 王は指輪をはずし、ユダヤ人の迫害者、アガグ人ハメダタの子ハマンに渡して、
3:11 言った。「銀貨はお前に任せる。その民族はお前が思うようにしてよい。」
3:12 こうして第一の月の十三日に、王の書記官が召集され、総督、各州の長官、各民族の首長にあてて、ハマンの命ずるがままに勅書が書き記された。それは各州ごとにその州の文字で、各民族ごとにその民族の言語で、クセルクセス王の名によって書き記され、王の指輪で印を押してあった。
3:13 急使はこの勅書を全国に送り届け、第十二の月、すなわちアダルの月の十三日に、しかもその日のうちに、ユダヤ人は老若男女を問わず一人残らず滅ぼされ、殺され、絶滅させられ、その持ち物は没収されることとなった。
3:14 この勅書の写しは各州で国の定めとして全国民に公示され、人々はその日に備えた。
3:15 急使は王の命令を持って急いで出発し、要塞の町スサでもその定めが公布された。スサの都の混乱をよそに、王とハマンは酒を酌み交わしていた。

第4章


4:1 モルデカイは事の一部始終を知ると、衣服を裂き、粗布をまとって灰をかぶり、都の中に出て行き、苦悩に満ちた叫び声をあげた。
4:2 更に彼は王宮の門の前まで来たが、粗布をまとって門に入ることは禁じられていた。
4:3 勅書が届いた所では、どの州でもユダヤ人の間に大きな嘆きが起こった。多くの者が粗布をまとい、灰の中に座って断食し、涙を流し、悲嘆にくれた。
4:4 女官と宦官が来て、このことを王妃エステルに告げたので、彼女は非常に驚き、粗布を脱がせようとしてモルデカイに衣服を届けた。しかし、モルデカイはそれを受け取ろうとしなかった。
4:5 そこでエステルはハタクを呼んでモルデカイのもとに遣わし、何事があったのか、なぜこのようなことをするのかを知ろうとした。ハタクは王に仕える宦官で、王妃のもとに遣わされて彼女に仕えていた。
4:6 ハタクは王宮の門の前の広場にいるモルデカイのもとに行った。
4:7 モルデカイは事の一部始終、すなわちユダヤ人を絶滅して銀貨を国庫に払い込む、とハマンが言ったことについて詳しく語った。
4:8 彼はスサで公示されたユダヤ人絶滅の触れ書きの写しを託し、これをエステルに見せて説明するように頼んだ。同時に、彼女自身が王のもとに行って、自分の民族のために寛大な処置を求め、嘆願するように伝言させた。
4:9 ハタクは戻ってモルデカイの言葉をエステルに伝えた。
4:10 エステルはまたモルデカイへの返事をハタクにゆだねた。
4:11 「この国の役人と国民のだれもがよく知っているとおり、王宮の内庭におられる王に、召し出されずに近づく者は、男であれ女であれ死刑に処せられる、と法律の一条に定められております。ただ、王が金の笏を差し伸べられる場合にのみ、その者は死を免れます。三十日このかた私にはお召しがなく、王のもとには参っておりません。」
4:12 エステルの返事がモルデカイに伝えられると、
4:13 モルデカイは再びエステルに言い送った。「他のユダヤ人はどうであれ、自分は王宮にいて無事だと考えてはいけない。
4:14 この時にあたってあなたが口を閉ざしているなら、ユダヤ人の解放と救済は他のところから起こり、あなた自身と父の家は滅ぼされるにちがいない。この時のためにこそ、あなたは王妃の位にまで達したのではないか。」
4:15 エステルはモルデカイに返事を送った。
4:16 「早速、スサにいるすべてのユダヤ人を集め、私のために三日三晩断食し、飲食を一切断ってください。私も女官たちと共に、同じように断食いたします。このようにしてから、定めに反することではありますが、私は王のもとに参ります。このために死ななければならないのでしたら、死ぬ覚悟でおります。」
4:17 そこでモルデカイは立ち去り、すべてエステルに頼まれたとおりにした。

第5章
 
エステル、王とハマンを招待する
5:1 それから三日目のことである。エステルは王妃の衣装を着け、王宮の内庭に入り、王宮に向かって立った。王は王宮の中で王宮の入り口に向かって王座に座っていた。
5:2 王は庭に立っている王妃エステルを見て、満悦の面持ちで、手にした金の笏を差し伸べた。エステルは近づいてその笏の先に触れた。
5:3 王は言った。「王妃エステル、どうしたのか。願いとあれば国の半分なりとも与えよう。」
5:4 エステルは答えた。「もし王のお心に適いますなら、今日私は酒宴を準備いたしますから、ハマンと一緒にお出ましください。」
5:5 王は、「早速ハマンを来させなさい。エステルの望みどおりにしよう」と言い、王とハマンはエステルが準備した酒宴に赴いた。
5:6 王はぶどう酒を飲みながらエステルに言った。「何か望みがあるならかなえてあげる。願いとあれば国の半分なりとも与えよう。」
5:7 「私の望み、私の願いはと申しますと」とエステルは言った。
5:8 「もし王のお心に適いますなら、もし特別な御配慮をいただき、私の望みをかなえ、願いをお聞き入れくださるのでございましたら、私は酒宴を準備いたしますから、どうぞハマンと一緒にお出ましください。明日、仰せのとおり私の願いを申し上げます。」
5:9 この日、ハマンはうきうきと上機嫌で引き下がった。しかし、王宮の門にはモルデカイがいて、立ちもせず動こうともしなかった。ハマンはこれを見て、怒りが込み上げてくるのを覚えた。
5:10 だが、ハマンは自制して家に帰った。彼は使いを送って親しい友達を招き、妻のゼレシュも同席させた。
5:11 彼は、自分のすばらしい財産と大勢の息子について、また王から賜った栄誉、他の大臣や家臣にまさる自分の栄進についても余すことなく語り聞かせた。
5:12 ハマンは更に言った。「その上、王妃エステルは御自分で酒宴を準備され、王をもてなされたが、王のお供として誰をお望みになったかと言えば、このわたしだけだった。明日もまた王と御一緒することになっている。
5:13 だが、王宮の門に座っているユダヤ人モルデカイを見るたびに、そのすべてがわたしにはむなしいものとなる。」
5:14 妻のゼレシュは、ハマンの親しい友だちと口をそろえて言った。「五十アンマもある高い柱を立て、明朝、王にモルデカイをそれにつるすよう進言してはいかがですか。王と一緒に、きっと楽しく酒宴に行けます。」ハマンはこの言葉が気に入り、柱を立てさせた。

第6章

 
モルデカイ、王から栄誉を受ける
6:1 その夜、王は眠れないので、宮廷日誌を持って来させ、読み上げさせた。
6:2 そこには、王の私室の番人である二人の宦官、ビグタンとテレシュが王を倒そうと謀り、これをモルデカイが知らせたという記録があった。
6:3 そこで王は言った。「このために、どのような栄誉と称賛をモルデカイは受けたのか。」そばに仕える侍従たちは答えた。「何も受けませんでした。」
6:4 王は言った。「庭に誰がいるのか。」ハマンが王宮の外庭に来ていた。準備した柱にモルデカイをつるすことを、王に進言するためである。
6:5 侍従たちが、「ハマンが庭に来ています」と言うと、王は、「ここへ通せ」と言った。
6:6 ハマンが進み出ると、王は、「王が栄誉を与えることを望む者には、何をすればよいのだろうか」と尋ねた。ハマンは、王が栄誉を与えることを望む者は自分以外にあるまいと心に思ったので、
6:7 王にこう言った。「王が栄誉を与えることをお望みでしたら、
6:8 王のお召しになる服を持って来させ、お乗りになる馬、頭に王冠を着けた馬を引いて来させるとよいでしょう。
6:9 それを貴族で、王の高官である者にゆだね、栄誉を与えることをお望みになる人にその服を着けさせ、都の広場でその人を馬に乗せ、その前で、『王が栄誉を与えることを望む者には、このようなことがなされる』と、触れさせられてはいかがでしょうか。」
6:10 王はそこでハマンに言った。「それでは早速、わたしの着物と馬を取り、王宮の門に座っているユダヤ人モルデカイに、お前が今言ったとおりにしなさい。お前が今言ったことは何一つおろそかにしてはならない。」
6:11 ハマンは王の服と馬を受け取り、その服をモルデカイに着せ、都の広場で彼を王の馬に乗せ、その前で、「王が栄誉を与えることを望む者には、このようなことがなされる」と、触れ回った。
6:12 モルデカイは王宮の門に戻ったが、ハマンは悲しく頭を覆いながら家路を急いだ。
6:13 彼は一部始終を妻ゼレシュと親しい友達とに話した。そのうちの知恵ある者もゼレシュも彼に言った。「モルデカイはユダヤ人の血筋の者で、その前で落ち目になりだしたら、あなたにはもう勝ち目はなく、あなたはその前でただ落ちぶれるだけです。」
6:14 彼らがこう言っているところへ、王の宦官たちがやって来て、エステルの催す酒宴に出るよう、ハマンをせきたてた。

第7章

ハマン、失脚する
7:1 王とハマンは、王妃エステルの酒宴にやって来た。
7:2 この二日目の日も同様に、ぶどう酒を飲みながら王は言った。「王妃エステルよ、何か望みがあるならかなえてあげる。願いとあれば国の半分なりとも与えよう。」
7:3 「王よ、もしお心に適いますなら」と王妃エステルは答えた。「もし特別な御配慮をいただき、私の望みをかなえ、願いを聞いていただけますならば、私のために私の命と私の民族の命をお助けいただきとうございます。
7:4 私と私の民族は取り引きされ、滅ぼされ、殺され、絶滅させられそうになっているのでございます。私どもが、男も女も、奴隷として売られるだけなら、王を煩わすほどのことではございませんから、私は黙ってもおりましょう。」
7:5 クセルクセス王は王妃エステルに、「一体、誰がそのようなことをたくらんでいるのか、その者はどこにいるのか」と尋ねた。
7:6 エステルは答えた。「その恐ろしい敵とは、この悪者ハマンでございます。」ハマンは王と王妃の前で恐れおののいた。
7:7 王は怒って立ち上がり、酒宴をあとにして王宮の庭に出た。ハマンは王妃エステルに命乞いをしようとしてとどまった。王による不幸が決定的になった、と分かったからである。
7:8 ハマンがエステルのいる長いすに身を投げかけているところへ、王宮の庭から王が酒宴の間に戻って来た。王は言った。「わたしのいるこの宮殿で、王妃にまで乱暴しようとするのか。」この言葉が王の口から発せられるやいなや、人々はハマンの顔に覆いをかぶせた。
7:9 宦官の一人、ハルボナは王に言った。「ちょうど、柱があります。王のために貴重なことを告げてくれたあのモルデカイをつるそうとして、ハマンが立てたものです。五十アンマもの高さをもって、ハマンの家に立てられています。」王は、「ハマンをそれにつるせ」と命じた。
7:10 こうしてハマンは、自分がモルデカイのために立てた柱につるされ、王の怒りは治まった。

第8章

8:1 その日クセルクセス王は、ユダヤ人の敵ハマンの家を王妃エステルに与えた。エステルはモルデカイとの間柄を知らせたので、モルデカイは王の前に出た。
8:2 王はハマンから取り返した指輪をモルデカイに与え、エステルは彼をハマンの家の管理人とした。
ユダヤ人迫害、取り消される
8:3 エステルは、再び王の前に申し出て、その足もとにひれ伏し、涙を流し、憐れみを乞い、アガグ人ハマンの悪事、すなわち、ユダヤ人に対して彼がたくらんだことを無効にしていただくことを願った。
8:4 王が金の笏を差し伸べたので、エステルは身を起こし、王の前に立って、
8:5 言った。「もしお心に適い、特別の御配慮をいただき、また王にも適切なことと思われ、私にも御目をかけていただけますなら、アガグ人ハメダタの子ハマンの考え出した文書の取り消しを書かせていただきとうございます。ハマンは国中のユダヤ人を皆殺しにしようとしてあの文書を作りました。
8:6 私は自分の民族にふりかかる不幸を見るに忍びず、また同族の滅亡を見るに忍びないのでございます。」
8:7 そこでクセルクセス王は王妃エステルとユダヤ人モルデカイに言った。「わたしはハマンの家をエステルに与え、ハマンを木につるした。ハマンがユダヤ人を滅ぼそうとしたからにほかならない。
8:8 お前たちはよいと思うことをユダヤ人のために王の名によって書き記し、王の指輪で印を押すがよい。王の名によって書き記され、王の指輪で印を押された文書は、取り消すことができない。」
8:9 そのころ、第三の月のこと、すなわちシワンの月の二十三日に、王の書記官が召集され、インドからクシュに至るまで、百二十七州にいるユダヤ人と総督、地方長官、諸州の高官たちに対してモルデカイが命ずるがままに文書が作成された。それは各州ごとにその州の文字で、各民族ごとにその民族の言語で、ユダヤ人にはユダヤ文字とその言語で、
8:10 クセルクセス王の名によって書き記され、王の指輪で印を押してあった。その文書は王家の飼育所で育てられた御用馬の早馬に乗った急使によって各地に届けられた。
8:11 こうして王の命令によって、どの町のユダヤ人にも自分たちの命を守るために集合し、自分たちを迫害する民族や州の軍隊を女や子供に至るまで一人残らず滅ぼし、殺し、絶滅させ、その持ち物を奪い取ることが許された。
8:12 これはクセルクセス王の国中どこにおいても一日だけ、第十二の月、すなわちアダルの月の十三日と定められた。
8:13 この文書の写しはどの州でもすべての民族に国の定めとして公示され、ユダヤ人は敵に復讐するためその日に備えるようになった。
8:14 御用馬の早馬に乗った急使は王の命令によって直ちに急いで出立し、要塞の町スサでもこの定めが言い渡された。
8:15 モルデカイが紫と白の王服に、大きな黄金の冠と白と赤の上着を着け、王の前から退出してくると、スサの都は歓声に包まれた。
8:16 それはユダヤ人にとって輝かしく、祝うべきこと、喜ばしく、誉れあることであった。
8:17 王の命令とその定めが届くと、州という州、町という町で、ユダヤ人は喜び祝い、宴会を開いて楽しくその日を過ごした。その地の民族にもユダヤ人になろうとする者が多く出た。ユダヤ人に対する恐れに襲われたからである。

第9章

ユダヤ人の復讐
9:1 第十二の月、すなわちアダルの月の十三日に、この王の命令と定めが実行されることとなった。それは敵がユダヤ人を征伐しようとしていた日であったが、事態は逆転し、ユダヤ人がその仇敵を征伐する日となった。
9:2 ユダヤ人はクセルクセス王の州のどこでも、自分たちの町で、迫害する者を滅ぼすために集合した。ユダヤ人に立ち向かう者は一人もいなかった。どの民族もユダヤ人に対する恐れに見舞われたからである。
9:3 諸州の高官、総督、地方長官、王の役人たちは皆、モルデカイに対する恐れに見舞われ、ユダヤ人の味方になった。
9:4 モルデカイは王宮で大きな勢力を持ち、その名声はすべての州に広がった。まさにこのモルデカイという人物は、日の出の勢いであった。
9:5 ユダヤ人は敵を一人残らず剣にかけて討ち殺し、滅ぼして、仇敵を思いのままにした。
9:6 要塞の町スサでユダヤ人に殺され、滅ぼされた者の数は五百人に達した。
9:7 そして、パルシャンダタを、ダルフォンを、アスパタを、
9:8 ポラタを、アダルヤを、アリダタを、
9:9 パルマシュタを、アリサイを、アリダイを、ワイザタをと、
9:10 ユダヤ人の敵ハメダタの子ハマンの十人の息子を殺した。しかし、持ち物には手をつけなかった。
9:11 その日、要塞の町スサの死者の数が王のもとに報告された。
9:12 王は王妃エステルに言った。「要塞の町スサでユダヤ人は五百人とハマンの息子十人を殺し、滅ぼした。王国の他のところではどうだったか。まだ望みがあるならかなえてあげる。まだ何か願い事があれば応じてあげよう。」
9:13 エステルは言った。「もしお心に適いますなら、明日もまた今日の勅令を行えるように、スサのユダヤ人のためにお許しをいただき、ハマンの息子十人を木につるさせていただきとうございます。」
9:14 「そのとおりにしなさい」と王が答えたので、その定めがスサに出され、ハマンの息子十人は木につるされた。
9:15 スサのユダヤ人はアダルの月の十四日にも集合し、三百人を殺した。しかし、持ち物には手をつけなかった。
9:16 王国の諸州にいる他のユダヤ人も集合して自分たちの命を守り、敵をなくして安らぎを得、仇敵七万五千人を殺した。しかし、持ち物には手をつけなかった。
9:17 それはアダルの月の十三日のことである。十四日には安らぎを得て、この日を祝宴と喜びの日とした。
9:18 スサのユダヤ人は同月の十三日と十四日に集合し、十五日には安らぎを得て、この日を祝宴と喜びの日とした。
9:19 こういうわけで、地方の町に散在して住む離散のユダヤ人は、アダルの月の十四日を祝いの日と定め、宴会を開いてその日を楽しみ、贈り物を交換する。
プリムは運命の祭り
9:20 モルデカイはこれらの出来事を書き記し、クセルクセス王のすべての州にいる全ユダヤ人に、近くにいる者にも遠くにいる者にも文書を送り、
9:21 毎年アダルの月の十四日と十五日を祝うように定めた。
9:22 ユダヤ人が敵をなくして安らぎを得た日として、悩みが喜びに、嘆きが祭りに変わった月として、この月の両日を宴会と祝祭の日とし、贈り物を交換し、貧しい人に施しをすることとした。
9:23 ユダヤ人は既に実行し始めていたことでもあり、またモルデカイが書き送ってきたこのことを受け入れた。
9:24 すなわち、「全ユダヤ人の敵アガグ人ハメダタの子ハマンはユダヤ人絶滅をたくらみ、プルと呼ばれるくじを投げ、ユダヤ人を滅ぼし去ろうとした。
9:25 ところが、このことが王に知らされると、王は文書をもって、ハマンがユダヤ人に対してたくらんだ悪いたくらみはハマン自身の頭上にふりかかり、彼は息子らと共に木につるされるよう命じられた。
9:26 それゆえ、この両日はプルにちなんで、プリムと呼ばれる。」それゆえ、その書簡の全文に従って、またこの件に関して彼らの見たこと、彼らに起こったことに基づいて、
9:27 ユダヤ人は自分たちも、その子孫も、また自分たちに同調するすべての人も同様に毎年この両日を記載されているとおり、またその日付のとおりに、怠りなく祝うことを制定し、ならわしとした。
9:28 こうして、この両日はどの世代にも、どの部族でも、どの州でも、どの町でも記念され、祝われてきた。このプリムの祭りは、ユダヤ人の中から失せてはならないものであり、その記念は子孫も決して絶やしてはならないものである。
9:29 さて、王妃となったアビハイルの娘エステルは、ユダヤ人モルデカイと共にプリムに関するこの第二の書簡をすべての権限をもってしたため、確認した。
9:30 クセルクセスの王国百二十七州にいるすべてのユダヤ人に、平和と真実の言葉をもって文書が送られ、
9:31 こうしてユダヤ人モルデカイが王妃エステルと共に定めたとおり、また彼らが自分たちとその子孫のために断食と嘆きに関して定めたとおり、プリムの祭りの日付が定められた。
9:32 エステルの言葉によってプリムに関する事項は定められ、文書に記録された。

第10章


モルデカイの栄誉
10:1 クセルクセス王は全国と海の島々に税を課した。
10:2 王が権威をもって勇敢に遂行したすべての事業と、またその王が高めてモルデカイに与えた栄誉の詳細は、『メディアとペルシアの王の年代記』に書き記されている。
10:3 ユダヤ人モルデカイはクセルクセス王に次ぐ地位についたからである。ユダヤ人には仰がれ、多くの兄弟たちには愛されて、彼はその民の幸福を追い求め、そのすべての子孫に平和を約束した。




当ブログ紹介
2013年7月6日・エステルに見る主イエスキリストの十字架

0 件のコメント:

コメントを投稿